【誰もが闇を持っている】
宴を中断させた停電。その最中に起きたとある事件。解決に奔走する程露わになる、人々の隠された真実。果たして光は射すのか?
事件が起き解決を目指す物語ですから、当然ミステリーです。
しかしながら、イランの名匠アスガー・ファルハディの興味はそこにはありません。
少しずつズレている登場人物たちをつぶさに描くことで、人間誰しもが持っている心の闇が炙り出していくんです。
そう、ファルハディは「真犯人が誰かわかるかなぁ?」なんて無邪気な問いかけはしてくれません。
事件解決に奔走する人々に試練を与え、観る者が居心地の悪さを感じるのを楽しんでいるかのようです。
そんなわけでミステリーを期待すると少々肩すかしを食らうわけですが、本作はなんといってもエピローグがいいんですよ。
事件が解決したというのに何も解決していないかのようなどよ~んとした空気。
むしろここから2時間ぐらい彼らの人生を見てみたいとすら感じてしまいます。
これぞ究極のイヤミスであり、黒い人間ドラマ!
そして、エンドロールに突入する瞬間の巧みさ!
余韻がハンパなくて、全身に震えがきました。
これだけで私はかなり加点してしまうんですよねぇ。
いや~、やられた!