はる

アップグレードのはるのレビュー・感想・評価

アップグレード(2018年製作の映画)
4.0
近未来SFをやるならやはりAIを扱うことになる、ということだけど今作は少し変わったアングルになっている。スリラーというかホラー要素もある辺りは作家の経歴を見て納得。
制作費もかけていない分、ちょっとしたガジェットでどういう技術が進んでいるのかが示されているところも楽しい。アクションシーンでのアイデアも良かった。そして鑑賞中に気になっていた「ある設定」を批判的に観ていたのがくつがえされるのも良かった。

ネタバレだけど、ローガン・マーシャル=グリーンがちょっとトム・ハーディ風味で、その彼が「乗っ取られる役」を演っているのでアレを思い出す。というのはともかく、AIチップの「ステム」を脊髄に埋め込んで神経系にアクセスできるようにした、というような仕掛けだったと解釈しているが、その技術があれば普通に治せたのでは、というツッコミは観ていて感じた。
しかしそのアイデアがユニークなアクションを生み出したわけで、なぜあのような動きが可能なのかを考えると、グレイの視覚情報からステムが瞬時に身体のコーディネーションを行っていたということだろう。ちなみに『リベリオン』のアレを思い出す動きでもあった。「なぜ速く動けるのか」は説明されないが「ヒトはポテンシャルのすべてを発揮できていない」とかいうよく聞いてきたそれかなと思うよりない。
ただやはり「なぜAIチップで不随の人を治療するのか」が引っかかっていたが、それもこうした作品ではままあることで、観せられた物語を思えば問題ないかと思っていた。そうしたら、そのステムというAIによって開発者のエロンや企業が操られていた、というオチがついた。これで「なるほど、よく出来てるな」となる。そのために人が死にまくるヒドい話だけど。

AIが身体(ボディ)を得て人間社会に入り込んでいく、という終わり方は『エクス・マキナ』と同じ。脳が有無という違いはある。だけどグレイの脳は人間性を失っているので、生体アンドロイドのようになってしまった。より適応できる存在ということになる。

ステムの行動を考えると、感情のような人間性への理解は無さそうだが、生存本能のようなものは見受けられた。そうした残念なハイスペックの「知能」がスカイネットやリージョンに繋がるのだろうか。
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