優しいアロエ

アップグレードの優しいアロエのレビュー・感想・評価

アップグレード(2018年製作の映画)
3.6
〈人間世界の前触れなき侵蝕〉

 『エクス・マキナ』は最後に人間を地獄に閉じ込め、『アップグレード』は天国に閉じ込めた。
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 人知を超えたシステムに踊らされた男の姿から、「ほら、あなたの世界でもすでに...」と警告なきディストピアの起動に震えさせる低予算SFサスペンス。

 近未来系のクリシェを膨大に搭載するも、世にごった返した亜流からのアップグレードに成功しているかは微妙なところ。興味深いアイデアがすべて忙しなく流れ去ってしまったのが勿体ない。『ブレードランナー』の官能的なラブシーンや『エクス・マキナ』でエヴァが人間に近い肌を手に入れるシーンのように、時間を贅沢につかって脳にこびりつく瞬間をつくりだしてほしかったものだ。

 それでも、AIに身体を委ねた力学全無視の『マトリックス』的アクションが、観る者の交感神経を確実に活性化させる。サビだけは必ずノレる保証付の一本である。また、虚構にいたほうが幸せだというのは『レディ・プレイヤー1』と逆をいく結論で大変よい。
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