このレビューはネタバレを含みます
これは実話に基づいた作品ではない。
アメリカの大学生グループ四人が実際に起こした事件に取材した作品。自らの人生に足りない何かが目の前で光るように思えた時、人間としての理性と動物としての野生性とが線上で押し合う。
現に起こった事件に取材し、当人たちがスクリーンに出てくるという点でノンフィクション、ドキュメンタリーとしての性格も強く持った作品に仕上がっていた。その現実性、リアルさのようなものがオーシャンズなどの作品群との差別化を成功させていたように思えた。
一線を越えた先に眠っている暴力性、凶暴性、動物性の性質を作品の鍵である本との交差点として見出しているのは非常に見応えがあった。非現実の中に現実感を取り入れるドキュメンタリーの手法と反対に、非現実の中から現実を引っ張り出すような効果があったように感じた。
今回、試写会での鑑賞であったが、上映後行われた監督のトークショーが非常に面白かった。作品には収められていない、また一度観ただけでは拾い上げることの出来なかった点などが作り手の側から提示されるのは、作品を深く理解する上で非常に効果的なものだった。
この作品が日本という風土にどのように受け入れられるのか、行く末を見守りたいと思う。
