がんがん

アメリカン・アニマルズのがんがんのネタバレレビュー・内容・結末

アメリカン・アニマルズ(2018年製作の映画)
4.3

このレビューはネタバレを含みます

羽ばたくことができない4人のハングリーマン達の実話。

物語の途中で主人公が万引きしようとするコーンフレークの裏面にHungry manと大きく印刷されていた。

大学に行かせてもらっているのに、自分の人生はこんな平坦じゃないはずだ、もっとドラマティックに刺激溢れる将来が待っているはずだ、と夢に飢えた4人の若者。

冒頭のBGMのベースが表と裏拍で一小節毎にシャッフルする奇妙なリズムで始まる。まるで表=「今の人生」と裏=「これから犯罪計画を起こす本編」で揺れ動いているように不穏な音楽で始まる。

オープニングクレジットでは図鑑の中のたくさんの鳥達の絵が映し出される。それぞれの鳥の目がフィーチャーされている。私達は空を飛び羽ばたくことができるがお前達はどうだ?お前達4人をいつも見張っているぞ、どんなことを計画しても私達は見ているぞ、と鳥達が言わんばかりのような演出が少し怖い。

スナッチやオーシャンズ11をモチーフにしたBGMによりお洒落で華麗な窃盗シーンは描かれるも、現実はそううまくはいかない。覚悟もなく、杜撰な計画、自分達を責め合い、責任を押し付け合う。もちろんすぐに逮捕され7年の刑に。この若者達はレザボアドッグスにはなれなかった。

鳥図鑑の開いてるページが事前調査の時はフラミンゴが描かれており、窃盗当日のシーンでは鳥の捕食シーンのページになっていた。フラミンゴ=片足でもバランスよく立つ、つまり地に足の付いた平穏な人生。捕食シーン=この計画は失敗し君たちは逮捕される、ということの示唆か。

トレインスポッティングの冒頭ユアンマクレガーが車に轢かれかけるシーンのオマージュもあり。あの作品ではChoose your lifeとのメッセージを発信していた。同じく夢に飢えていた若者達の物語。本作の若者達も人生を選べたはずなのに…司書のおばさんを傷つけ、それぞれの両親を悲しませる人生を選んでしまった。

本編ラストシーンでは現実のスペンサー本人が、4人の車が通り過ぎるのを見ているシーンとリンクする。これは思わずドキッとした。あの時計画をやめていたら…別の人生を選んでいたら…きっと誰にでもあるシーンだと思う。もちろん犯罪はしないまでも、あの時あんなことをしなければ、何故あんなことをしてしまったのか、などと誰しもが振り返りたい過去はあると思う。

しかし我々には人生を選択することができるし、選択してしまったその人生は進み続けるしかない。過去を振り返っても過去は変えられない。いつか羽ばたこうともがき続けるしかないのだ。どんなに飢えていても。

最後に本人達は映画の道に進んだり、芸術家になったり、本を書いたりときちんと前に進んでいると感じました。自暴自棄にならず、きちんと犯した罪を償い、未来に向かって歩いているように見えました。

最後にたけしが出てくるのかなってくらいアンビリバボーな構成で、実話に基づく物語ではなく、完全に実話そのものという説得力が凄かった。本人映像がエンドロールに流れる、というのはよくあるパターンですが、まさか本編にがんがん出てくるとは…司書のおばさんめちゃめちゃそっくりだったな。




バリーコーガンは本当に魅力ある俳優ですね。ダンケルクといい、聖なる鹿殺しといい、主役がすぐに食われてしまう存在感。顔の造形がもうすでに凄い説得力ある。彼目当てでの鑑賞でしたが、相変わらずの好演技で物凄く良い作品に出会えました。

主役の人は時計仕掛けのオレンジの主人公に似ててなんだか怖かった。いつミルクを飲みだすかとひやひやした。

司書のおばさんは後遺症も無いようで、無事に生きててほんと良かった。
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