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アメリカン・アニマルズのtetsu0615のネタバレレビュー・内容・結末

アメリカン・アニマルズ(2018年製作の映画)
4.7

このレビューはネタバレを含みます

これは面白い!

「何かをスゴいことをしたい」「劇的な何かが起これば人生は変わるはずだ」「やらなかったことを後悔したくない」…そんな想いを抱える彼らが企てのは、強盗計画だったー2004年ケンタッキーで起きた実際の事件を本人たちのインタビューと再現映像を交えながら描く"真実の物語"

彼らが立てる計画の妄想にワクワクして、実行した行方にハラハラして、彼らが行き着くしかないであろう悲劇的な結末に心を痛めて…愚かで稚拙な強盗計画に邁進してしまう彼らの行く末に目を離せず、彼らを応援してしまうような…そんな映画だった。

大学生のスペンサーとウォーレン。退屈な日常、退屈そうな未来に希望を持てずにいた彼らは図書館に保管されている時価12億円の本の存在を知る。彼らは人生を変えるため、その本の強盗計画を企て友人二人をさらに巻き込み計画を実行しようとするが…

前半は少し退屈かもしれない。彼らが退屈と感じている日常の一コマだ。「特別な何かが起きれば、人生は変わるはず。その特別な何かが起きるのを待っている」そんなスペンサーの台詞にあるように彼らは日常ではない特別を求めていた。そんな退屈で希望が持てなさそうな日々を送る(その日常がかけがえのない大切なものだと知らない)彼らは図書館の本の存在を知り、強盗計画を企てることに。
行動力は抜群な彼らはニューヨークにいきなり行ったりアムステルダムに行ったりと一歩一歩計画に向けて進みだす。現在の本人たちもこの辺を語るときには表情も柔らかく楽しい思い出を語るかのようだ。
スーツでビシッと決めた強盗計画成功の妄想やコードネームをつけるなど、新たな仲間を巻き込みながら、映画で身につけたような知識で計画を進める四人の姿はどこかワクワクさせるようで、言うなれば「秘密基地でひっそり集まった仲間たちと悪巧みしている」ような懐かしい気持ちにもさせてくれるよう(自分、彼らとそこまで年齢違わないけど笑)

何度も妄想だけで終わらせることはできた、ここで辞めておけばーそんな時も過ぎ、いよいよ迎えてしまった決行の日。もちろん、妄想通りに事は運ばず様々なトラブルが彼らを襲い…

計画実行での彼らの焦燥、困惑、慟哭、後悔…これらの感情が画面からヒシヒシと伝わり、あまりにもずさんで幼稚な計画の行く末をハラハラしながら見つめてしまい、他の犯罪映画とは一線を画す緊張感に襲われた。

計画が終わり、彼らの後悔を浮かべる表情-明るく語っていた現在の彼らの表情も重く暗い-に、彼らを待ち受ける今後の展開にどこか心を締め付けられるようですっかり彼らの"味方"とは違うのだが、彼ら側として見守っている気持ちになった。

最後に示されたように、この物語が全て真実だったのか、実はあのとき彼は~をしていないのではないか?という曖昧さをはらみつつこの物語は終わりを迎える。


どこまでが真実なのか、それは語り手のみ知る…そんな虚実曖昧な部分をスパイスに、人生を変えるため、刺激を求めるために強盗計画というとんでもない一線を越えてしまった若者四人の(間違ってしまった)青春とその後悔を描く珠玉の犯罪ドラマ
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