サンヨンイチ

アメリカン・アニマルズのサンヨンイチのレビュー・感想・評価

アメリカン・アニマルズ(2018年製作の映画)
3.7
2004年、大学図書館に保管されている時価1200万ドル相当の画集が強盗によって狙われる事件が発生。
しばらくして犯人グループ逮捕に至ったが、逮捕された4人は変哲もないありふれた学生たちだった。
「事実に基づく物語」を、当事者の回想録と共に映し出すことで「事実の物語」へと昇華したドキュメンタリー風作品。


ほとんどきっかけというきっかけがなく、
周囲の人から見ればなんとなく犯行に至ったと見るのが自然。
それほどに平凡な生活を歩んでいたウォーレンとスペンサー。
特別な人間になりたいという理想は結構だが、強盗が自分を特別な人間へと押し上げるという発想がなんとも浅ましい。
家族のインタビューでの発言一つ一つの重さと比較しても彼らの行動の軽率さは目に余り、
計画性の無さ、詰めの甘さ、覚悟の低さが全てを助長している。

強盗という大掛かりな犯罪でなくとも若気の至りから為る事件や社会問題の当事者の犯罪心理、深層心理を探求した作品であり、
出所前から彼らにアプローチし製作に取り掛かっていた監督の発想力が端々から伝わってくる。
その再現度の高さに本人たちもこの映画が事実であることを認めており
エンターテイメントとしての脚色との絶妙なバランスも窺える。

決して美談ではなく、
この事件がなければ彼らはもっと成功していたかもしれない可能性を見せつつ
特別な人間になる為に愚行を働く因果となった人生への焦燥感は
誰にでも起こりうる出来事であると感じさせてくれる。