サムカワ

アメリカン・アニマルズのサムカワのレビュー・感想・評価

アメリカン・アニマルズ(2018年製作の映画)
4.8
悲劇と喜劇は紙一重
とはよく言ったもので。



予告編のオシャレでクールな『オーシャンズ11』的な!?とワクワクしておりましたが、実は何とも恥ずかしい若気の至り映画!


映画とかで
"鍵などを投げて渡す"
よくありますよね。

僕はあれ観る度に「俺だったら絶対キャッチできない……」と思ってしまうんですが、本作はものすごく平たく言うと そんな感じの映画です。


『オーシャンズ11』みたいな!
『レザボア・ドッグス』みたいな!
あんな感じのチョーかっけぇことしよーぜ!こんなところから抜けだそーぜ!
って若者が実際やってみたらもうテンヤワンヤ。


描き方によっちゃクライマックスは爆笑必至のスラップスティックコメディシーンになり得る展開の連べ打ちですが、本作のニクいところは、決してコメディタッチでは描かず、とにかくハラハラドキドキのサスペンスとして(つまり主人公たち視点)を貫いて描いていくんです。


だから手に汗握るし、見ていて声をあげちゃいそうになる焦り感がたまらないんです。


でも、さすがにちょっと主人公チームのドタバタ感が行くところまで行くので、いくらシリアスに描いても笑っちゃうスレスレで「笑っていいのかなんなのか…」という絶妙なラインに到達します。これがまた最高で。


焦りながらクスクス笑っちゃう。
すごく楽しい映画体験でした。

また主人公たちのしでかすミスとかが、けっこう仕事とかでありがちなケアレスミスだったりもして
「そのノリでそれやっちゃうんかい!」とツッコミながらも、どこか心がズキズキするし、やっぱり主人公たちに感情移入しちゃうんですよね。


ただ「楽しい!」とか思いながらも
これまた実話ということで、なかなかにドスンとくる落とし方をしてくれます。

そして"実話"の定義が揺らぐ"証言"というものにフォーカスしている作りでもあるため、かなり不思議なバランスの映画でもありました。
近いのは『ジャージー・ボーイズ』とか『アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル』ですね。



本人たちからしたら、思い出したくもないような恥ずかしい過去。
被害者からしたら最悪な出来事。

それを実話として描いて、ここまで(語弊がある言い方ですが)"面白い"映画にしちゃうんだから、そもそもの話題選びと、ここまで仕上げる手腕とに、全力脱帽ですよ。


あと画作りが全部カッコよかった。
サムカワ

サムカワ