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アメリカン・アニマルズのmaverickのレビュー・感想・評価

アメリカン・アニマルズ(2018年製作の映画)
4.0
これは真実の物語。作り方が独特で面白い。再現ドラマのように、当事者である現在の本人がインタビューに答える形で登場する。彼らは大学の図書館に保管されている希少な本を強奪する事件を起こす。そこに至るまでの経緯を主に描く物語だ。大学生のこの年頃の男の子が陥るであろう罠。毎日に退屈し、未来に希望が持てず、何かを為す自分になりたいと渇望する。一攫千金を狙いたいというのもあったが、それよりも今までと違うビッグな自分になりたかったのだろう。仲間を集め、計画を練る下りは『オーシャンズ11』のように軽快に、そしていざ決行が決まると途端に緊張感が増してくる。こうした演出は本人達の心境とシンクロしていて観ている側も一体感を得られる。後半はめちゃくちゃシリアスだった。実際の事件なのですでに結末は分かっている。彼らは服役し、自ら明るい未来を閉ざしてしまった。若者の身勝手で自分本意な許されない犯罪なのだが、本作を通して見ることで、彼らがどこでどう間違った方向へと道を踏み外したかを知ることが出来る。彼ら自身インタビューで答えているが、それらの行き着く先が破滅へと繋がってしまった。現状を変えたい、違う自分になりたいという気持ちを他のものに使っていれば。毎日様々な犯罪が起きている。我々はニュースなどで、その事件の結果と簡単な経緯しか知れない。でもこうして彼らが犯行に至った経緯を日常として見てみると、誰しもが陥るような危険性を秘めているんだなと知ることが出来る。我々も進むべき方向を間違えれば、こうなる可能性があるのだ。事実、物を盗んだとか人を殺したとかの計画的犯罪は毎日のように起こっている。本作の彼らが起こした事件は何も特異なことではないのだ。彼らはいつでも思いとどまることが出来た。でもそうしなかった。それがすべて。本作にはかっこよさなどない、かっこわるい奴らの話だ。本作を観て生き方を真似しようと思う奴はいないだろう。いるならばそいつは病気だ。彼らを通して見て、自分達もどうすべきか理解できると思う。人物の心理を深く描いているからこそ、彼らの人生での葛藤が伝わってきた。評価の高さに納得の骨太な作品だったな。
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