MasaichiYaguchi

アンドレア・ボチェッリ 奇跡のテノールのMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

3.8
映画で披露される歌で自然と涙がこぼれるのも久し振りなような気がする。
“神の声”を持つと言われる世界最高峰のテノール歌手、アンドレア・ボチェッリが自ら執筆した実話小説「The Music of Silence」を、「ゲーム・オブ・スローンズ」のトビー・セバスチャン主演でマイケル・ラドフォード監督が映画化した本作は、アンドレア・ボチェッリが3大テノールの一人に上り詰めるまでの道のりは決して平坦ではなかったことを、心揺さぶる楽曲とドラマで描き出す。
彼は生まれた時から人とは違うハンディ、弱視という眼球の病気を持ち、長じてから遂にアクシデントで光を失う。
しかし神は、そんな彼に類いまれなる“ギフト”である歌唱力を与える。
彼は与えられた歌唱力で将来、歌手になることを決意するのだが、更なる試練が科されていく。
映画でも描かれたが、盲目であることで人は人生の選択肢を狭めてしまいがちだが、彼はハンディを物ともせず、夢に向かって進んでいく。
この作品には悪人が一人も出てこず、彼にエールを送る人が多く登場するが、その中でも両親や親友アレッサンドロ、ガールフレンドのエレナ、そしてジョバンニ叔父さん、そして師として正しく導くマエストロ、これらの人々の愛ある叱咤激励が心の襞に染みてくる。
我々に馴染み深い「オー・ソレ・ミオ」「アヴェ・マリア」「誰も寝てはならぬ」、そして「タイム・セイ・グッバイ」等の名曲に彩られた本作は、一人の偉大なテノールの半生を描いただけでなく、人との出会いの大切さ、その人達との触れ合いを通して如何に人生が豊かに、美しいものになるかを我々に示してくれる。