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こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話のkassyのレビュー・感想・評価

3.7
完成披露試写会にて。

筋ジストロフィー患者だった鹿野靖明さんの実話に基づく映画。

筋ジストロフィーの為、24時間体制でボランティアの手を借りて日々生きる鹿野は、夜更けにバナナを買ってこいと言ってしまうほど、勝手気儘な王様だ。
最初はそんな彼の姿に、高畑充希演じる美咲のように、映画を視聴している側も「なぜそうまでして皆はボランティアを?なぜこんな彼のワガママが通るのか?障害者は偉いのか?」と多少なりとも反発もしくは疑問を抱くだろう。

しかし、鹿野は知れば知るほど魅力的な人物であることが本編を通して描かれる。
辛い状況でありながらもユーモアは忘れず、身体は不自由でも心は自由であろうとい続け、いつまでも夢を持ち続ける。
そんな彼の姿に、こちらもだんだん元気をもらえる。
彼がただのワガママなやつではなく憎めない愛すべき人なのだと気づかされる。
もちろんボランティアは大変だが…みんな彼の事が好きなのだ。そして彼もまたみんな彼の事が好き。だから彼らはボランティアを快く行うのだ。自然とその事を映画を見ながら理解する事が出来た。
どうしても病人看護はしてもらう、してやってるという感情も生まれる事もある。だからすれ違いも発生する。
そこに対する鹿野の頑張りに気付かされるのだ。

映画の登場人物達はとある隠し事をする。それはその人にとって不利益だったり、完全に心を開いていないからだ。

終盤で鹿野がとった行動に対する美咲の行動は、ショッキングでさえあるが、その実彼の事を同情せず、真っ直ぐにきちんと彼に向き合った故に出した結果なのだ。
病人扱いせず対等に接してくれて、彼は内心嬉しかったに違いない。

鹿野を演じた大泉洋は、はまり役だった。愛すべきキャラを嫌みなく演じられるのは彼の力だろう。
脇を支える高畑充希と三浦春馬も不器用ながらいじらしさを演じるのが上手い。

実話に基づいているのでしょうがないのだが、若干何回か同じような展開が続くのが少し気になった。同じパターンを繰り返すので、冗長さを感じてしまった。

しかし、ユーモアに溢れた生きる力を感じさせてくれる作品だった。
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