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こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話のsomaddesignのレビュー・感想・評価

5.0
大泉洋働きすぎ問題
ひょっこりはん激似

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原作未読。
障害者をネタにした感動ポルノっぽい話だと嫌だなあと思ってたら、感動して泣くってより考えさせられる作りで良かった。

それにしても大泉洋の公開作多すぎる。
2018年だけで6作品。年末年始だけでも3本もあって、そのどれも主要キャストで、他にCMやテレビ、キャンペーン。Netflixでどうでしょう見てるの合わせると、いくらファンでも食傷気味(Netflixは自分のさじ加減だけど)

美咲(高畑充希)と田中(三浦春馬)の目を通じて、障害者と向き合うこと、ボランティアに参加するということを追体験する作りになっているので、彼らの葛藤苦悩がそのまま自分の気持ちに繋がるようで、一喜一憂しちゃう。
それだけに序盤で田中が美咲を鹿野のデートの相手に差し出す気持ち悪さで挫けそうになっちゃう。それだけ田中が色々分かってねえ奴って捉え方もできるし、とっとと付き合ってることを打ち明ければ騒動にならねえのに!とイライラする。それがまた病気の進行っていう側面以上に物語の推進力になってるので映画上止むを得ないのも分かるけど。


障害を乗り越えて懸命に自分なりの生き方を云々〜〜って話じゃなくて、鹿野を中心とした人々の関係性に焦点が当たっていて、各々の変化・成長こそが肝。
隣のおばちゃんが何度も鼻かむレベルで大号泣してたせいで自分が泣くタイミングを逸したせいもあるけど、自分ならどこまでできるか?とか自立って何だろう?とか考えさせられる方向で感動した。

大泉洋史上最も社会に問題提起を投げかける内容ながら、上質なエンタメに昇華してるのもエライし、10kg減量した上で首から上だけの演技で鹿野になりきって周囲を巻き込んでしまう人間味丸出し状態が素晴らしい。
思えば鹿野靖明という人は、どうしたって隠し事のし難い、心をバカッと開いて他人と関わらないと生きてられないワケで、自ずと周囲の人達も心を開いて応対せざるを得ない。
心開いて人間関係を作るって、人見知りのコミュ障からすれば生まれついての資質に思ってしまうけど、開いて向かってくる人がいれば開けるように、自分からだって開けるハズってとこを見せてもらえた感じ。

劇中一番変化していく、高畑充希の天真爛漫さが良かったし。鹿野に対して真摯に向き合って、慎重に言葉を選びながら丁寧に応対してるのも良かった。冗談ではぐらかす事も出来る場面なのに、逃げずに真正面から受け止める真面目さが素晴らしかった。


気になるのは、鹿野演じる大泉洋の北海道弁が完璧なのに対して、他の人達がほぼ訛りがなくて、一体全体どこなんだと。冬のシーンもほぼなくて、雪国の車椅子生活の困難さが知れると嬉しかった。

あと自立というなら収入の面。鹿野の要望に対してボランティアが気軽に鹿野の財布を持ち出して、色々買い物してるけど一体全体そのお金はどこから出るものだったのだろうか?
実際は生活保護や障害者年金を貰ってもなお火の車だったそうで、経済的にも自立できるよう、仕事や収入の面で模索する姿が見えるとリアリティがあったように思う……けど、そこまで入れると盛り沢山過ぎるかも。


2016年の相模原の事件があって以来、思いがけないことに犯人に同調する論調も少なくなくて、その中で思い切り周囲にワガママを振りまいて生きる障害者の話ってどういう受け止められ方なのか不安に思ってた。しかし「生きるって少なからず誰かに迷惑かけること」って劇中の言葉に勇気づけられた。有形無形に迷惑も恩恵も受けてるはず。「お互い様」っていい言葉だ。

104本目
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