せーじ

こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話のせーじのレビュー・感想・評価

3.5
128本目となる新年最初の鑑賞は、イオンシネマ市川妙典で、この作品を。
4割~5割とまずまずの入り。家族連れをはじめとする幅広い年齢層の人々が観に来ていた。

題材の面白さや全体的なプロットが伝えたい内容は好感が持てる素敵なものなのに、作品そのものの構造と演出の酷い所が目につきすぎて、とても残念なことになってしまっている作品だなと感じてしまった。
それでも、冒頭の掴みから高畑充希さん演じるヒロインが文字通り叩きつけるような嫌悪感を示すところあたりまでは、テンポも良くすごく面白かったのだが、そこから色恋の話が絡み始めるところくらいから、本筋とサブストーリーの比重がどんどん不安定なバランスになってしまって、一気に見づらく感じるようになってしまった。
難病ものの題材を語る語り口として「タイムサスペンス」という要素があると思うのだが、この作品の場合、それを走らせ始めてからどんどん引き伸ばして語ろうとしていくので、緊張感が保ち切れなくなるし、ストーリーそのものが終わりのない感覚になってしまいそうになる。
そこで切迫感を出そうとして、2回「外し」演出を入れたり、湿っぽい場面には例によって音楽でドガジャーンとやってしまっているので、非常に勿体ない。
また、主演の三人以外の人々のセリフが所々説明的だったり、心情を台詞で語りきろうとしてしまっているのも上手くないと思うし、整理すればもっとコンパクトにまとめることが出来たはずだろう。
120分もあるのに、90分くらいの内容しか語られていないように感じられてしまって、つくづく勿体ないなと思ってしまった。

ただ、主演の三人(特に大泉洋さんと高畑充希さん)は熱演されていましたし、医療関連の描写は考証もしっかり入っているようで、不自然には感じませんでした。そういう意味では「こういう人がいたのだ」ということをキッチリと描いていたとは思います。
…もっとも「愛しき実話」という超絶的にダサいサブタイトルをつけてしまったセンスと、エンディングテーマを"あの曲"にしなかったというのは、個人的には大きく減点をしたいところですが。
主人公の彼のような口調で作り手を小一時間問い詰めたくなりましたw
せーじ

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