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こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話のmanamiのレビュー・感想・評価

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身体に障がいのある方への支援としてずっとメインだったのは、ADL=日常生活動作。筋ジストロフィーを患っている鹿野は、大勢のボランティア達にADLを支えられて「自立生活」を送る。
一方でのべ500名に及ぶボラ達が鹿野から学ぶのは、介助のやり方、それ以上に命や生き方について、生命の質=QOL。
1990年代にここまで堂々と自分らしい生き様を貫いた方がいたとは、心底驚く。
自分勝手でめんどくさくて偉そうな鹿野に、美咲がキレるのも無理はない。でも彼の「命がけのワガママ」は、強い求心力となって周りを巻き込んでいくし、美咲もそれに抗えない。
「鹿野ボラ」達にキツイ物言いができるのも、医者と言い合えるのも、鹿野から相手への尊敬、そして自分自身へも尊敬があるからではないかなと感じる。「俺の身体について親が責任を取る必要はない」というような鹿野の言葉があるけど、自身についても同じことを思ってるんじゃないかな。
病人だからって、障がい者だからって、負い目を感じたくない。自分自身を尊重したい、尊重されたい、それに値する人間であろうとしている、そういう風に私には見える。
身体の自由がどんどん奪われ、「言葉が生きるための唯一の武器」になる。それなのに生きるためにその武器までも諦めて手放さければならなくなる。その辛さに感情移入する間もなく、葛藤の末に受け入れた人工呼吸器すら味方につけてしまう鹿野。
夢を持つという行為が人間に与えるパワーの大きさを見せつけられる。そしてこの作品の凄いところは、鹿野を「かわいそう」と見る側に思わせない点にもある。障がいを描く作品において、なかなか出来ることじゃないよ、素晴らしい!

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