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マイ・サンシャインのKUBOのレビュー・感想・評価

マイ・サンシャイン(2017年製作の映画)
3.8
12月3本目の試写会は、ハル・ベリー、ダニエル・クレイグ、ダブル主演「マイ・サンシャイン」。

明るいポスターイメージに騙されるが、本作は1992年に実際に起きたロサンゼルス暴動を、ハル・ベリー演じるホストマザーの一家の目線で描いた問題作。ある意味、もう一つの「フルートベール駅で」であり、ソフトな「デトロイト」でもある。

冒頭、いきなりの惨劇に度肝を抜かれる。これも実際に起きた「黒人少女ラターシャ・ハーリンズ射殺事件」。この当時、黒人が警察や市民に不当に暴力を振るわれる事件が横行し、この作品も「ロドニー・キングへの集団暴行事件」の裁判の行方を見守る時間軸で語られる。

この「ロドニー・キング事件」は、複数の白人警官による黒人青年への集団暴行が、事件を録画したビデオが流布したことにより問題化し、その裁判の行方が見守られていた。

親が刑務所にいたりして行き場のない子供たちを預かって育てているミリー(ハル・ベリー)はホストマザー。やんちゃな幼児から反抗期の中高生まで、まるで家が保育園のような大家族で暮らしている。

そんなミリーの家の向かいに住む偏屈な白人オビー(ダニエル・クレイグ)とは普段は犬猿の仲だが、突然起こった暴動に2人で巻き込まれる。

日常の中に潜む黒人たちの苛立ちが「キング裁判」で白人警官無罪の判決が出たことで一気に爆発する。街には銃声がこだまし、略奪が横行する。

真正面から捉えてしまえば、硬派なドキュメンタリー的なものになってしまう題材を、スター俳優を配し、その家族・隣人、特に子どもの目線で描くことで、間口の広い作品にしてある。

特に終盤、子供たちが川辺に火炎瓶を投げる姿で、ソフトに実際の暴動を想像させ、この子供たちの未来に同じようなことがあってはならないという思いを込めた演出は素晴らしい。

今、アメリカは、また人種間の対立を煽り、白人至上主義が台頭しそうな勢いだが、日本も対岸の火事とは言ってられない。外国人労働者の受け入れ拡大が急ピッチで進む日本で、同じような偏見や暴動が起こる可能性がないわけではない。

そんなきな臭い「今」、改めてこの事件を世に問う本作の意義は大きい。
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