愛鳥家ハチ

性別が、ない!インターセックス漫画家のクィアな日々の愛鳥家ハチのレビュー・感想・評価

3.5
漫画家の新井祥と同じく漫画家でパートナーの"こうくん"を追ったLGBTQが主題のドキュメンタリー作品。新井氏は30歳まで女性として生活していたところ、染色体検査でいわゆる半陰陽と診断されて以来、セクシャルマイノリティに関するコミックエッセイを執筆し続けています。新井氏の漫画は以前目にしたことがあったため、本作も気になり鑑賞しました。

ーー概念
 作中では、「半陰陽」、「パンセクシュアル」、「Xジェンダー」といった専門用語について逐次説明があり、各種概念について普段耳馴染みのない方にも配慮された構成となっています。「半陰陽(インターセックス)」とは、作中の解説によれば、医学的には「性分化疾患」と呼ばれ、通常は男女どちらかで統一される性器や性腺、染色体の性別が曖昧だったり、一致しない疾患の総称を指すとのこと。また、「パンセクシュアル」とは、誰かを好きになるにあたり相手の性を条件としないセクシュアリティのことであり、「Xジェンダー」とは、身体的性別に関わらず、性自認が男性にも女性にもあてはまらないという性自認を指すとされています。まずは概念の広がりをしっかりと認識することが必要かと思いますので、その意味でも大変勉強になりました。

ーー総評
 人間はとかくカテゴライズして安心したがる生き物であり、旧来的な男女二元論の認識の枠を超える新井氏はこれまでさぞ居心地の悪い経験をされたことかと拝察します。本作は、新井氏を始めとしたLGBTQの方々の苦悩を推し量る"想像力"を涵養する一つの契機となる作品でした。冒頭に流れるバッハの『主よ、人の望みの喜びよ』の清らかさが心に深く響きます。
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