イルーナ

猫の恩返しのイルーナのレビュー・感想・評価

猫の恩返し(2002年製作の映画)
3.7
『耳をすませば』のスピンオフ的なポジションの、愛すべき小品。
ジブリって基本的にどの作品も何かしら徹底的に濃さを感じさせるイメージだけど、これは良い意味でライトというか。
主題歌の『風になる』が本作の軽やかさにマッチしていて素敵です。
十字街からムタさんについていくと、あれよあれよというまに日常から心を持った「もの」達の世界へ。
猫の事務所に夕陽が収束されて、バロンが動き出すところは神秘的……
クライマックスのカラスの階段といい、その世界観は絵本を読んでいる気持ちになれる。

ドジっ子ハルが猫の王国の王子ルーンを助けたことがきっかけで起こる騒動と冒険。
しかし、猫の王国側はルーン王子とユキちゃん以外とにかく間の抜けた感じで描かれる。
恩返しの内容が人間側の都合を一切考慮しないものだし、やたら空気が読めない。
そして迷路でのドミノ倒しや猫王の決闘……うん、流石にこれはマヌケすぎる……

バロンは女の子が憧れる要素がたっぷり詰まっていますね。
ヒロイン(お姫様)を助けるヒーローは古今東西の憧れというか。
猫の事務所では「私のスペシャルブレンドだ。その都度味が変わるので、保証はできないがね」
ええ、ぜひともこだわりの一品を味わってみたいです……
猫の王国で猫化したハルを助けるくだりは大変ヒロイック。
そして「もしハルが、本当に私たちを必要としたなら、きっとまた猫の事務所の扉は開くだろう。その時まで、しばしの別れ!」と言いながらスタイリッシュに去っていく。
まさに「カッコいい」を体現したキャラでした。

相棒のムタさんは『あの夏のルカ』のマキャヴェリのモデルですよねやっぱ。
口も悪ければ周りからの扱いも悪いけど、何だかんだで最後までハルの冒険に付き合った。
でもマタタビゼリーで固まっているのには笑ってしまった……

ナウシカやラピュタ、もののけ姫のような大作感、骨太感はないけど、カフェでゆるりと過ごす感覚でサクっと観るにはピッタリ。
いや本当に本作は「愛すべき小品」という言葉がよく似合います。
イルーナ

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