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アウト&アウトのneroのレビュー・感想・評価

アウト&アウト(2018年製作の映画)
2.5
監督・脚本は『BE-BOP-HIGHSCHOOL』のきうちかずひろ。原作も本人の同名小説だそうだ。なかなか多才だねえ。

元ヤクザの探偵が事件に巻き込まれる裏社会モノだが、身寄りのない小学生の少女と二人暮らしという訳あり感を盛り込んで、ややウェットでハード&ルーズな探偵ドラマだ。
遠藤憲一演じる矢能のキャラクターが一人突き抜けていて、強面全開でヤクザに警察に代議士にと上から目線で渡り合う様は小気味良さまで感じさせるほどだが、それだけと言っていい。プロットは非情でも緻密でもないし、発砲もわずか数発。ゴア描写で見せるバイオレンス系でもなく、権謀術数渦巻く騙し合いでもない。裏社会系映画としてはやや中途半端。
むしろ、ヤクザ世界を一歩引いて見せている軽めの描写がなかなか楽しめた。登場人物それぞれキャラクターとしては面白いので、栞とヤー公/警察をもっと絡ませたドラマにしたほうが生きたんじゃないかな?

一気に回収にかかるシメの展開はむしろ笑える位で、全編このテイストだったらまだしも、映画の盛り上がりとしては正直かなり不満。
若いヒットマンが、冒頭の登場時は雰囲気あるのに、ストーリーが進むにつれてヘタれていくので敵にすらならないためでもあるが、最大の要因は矢能が危地に追い込まれないことだろう。娘とのバディ展開どころか人質にされた娘の救出劇すらない。 もう少し山を作ってほしいなあ。

栞と死んだ探偵、老婆との関係と、矢能の背景をあえて見せていない謎感が今作では生きているが、一方で、道場から一歩も出ないジジイとか花屋の姉ちゃんとか、要らなくない? 小説ではそのあたりも描写されているのだろうが、シリーズ化をもくろんでいるのかな。栞ちゃんがもう少し育ったら「レオン」ぽくなるかもしれんよ。
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