ケーティー

フォルトゥナの瞳のケーティーのレビュー・感想・評価

フォルトゥナの瞳(2019年製作の映画)
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主人公の誰にも理解されない行動に垣間見えるリアル


なぜか終盤の主人公の行動に涙が出た。特殊な能力を持つがゆえに出るしょうもない行動。ファンタジーともSFともつかない内容で、客観的、あるいは分析的な視点で観れば、くだらない作品だといくらでも扱き下ろせるかもしれない。
しかし、私が涙したのは、おそらく、主人公は必死だが、正義のために誰にも理解されない、あるいはバカにされる行動に出る。ここに、真実があるからだと思う。得てして現実社会でも、正義や正論で行動しようとすると笑いの的になることも多い。こういう他人には理解されないがんばりという現実にもあるリアルが、ファンタジーな(あるいはSF的な)設定と結び付いているからこそ、涙が出たのだろう。

どんなに現実にはありえない奇抜な設定でも、その本質に現実の何かが結びついていないと作品は成立しないことを改めて学んだ。

作品の細かい構成などでは粗がある。結末は伏線がかなりはっきりあって、すぐに読めたり、会話で哲学的なことを話すのが面白いが、やや多くいかにもドラマ(あるいは映画)のセリフだと感じるところは少し工夫があってもいいだろう。
(手紙のところなどはうまいのだが)

それにしても、終盤の展開にはどうしても関西でのある事故を思い出さざるを得なかった。原作者の百田さんが関西出身だけに、どこかあの事故の記憶があったのか。はたまた偶然の一致か。あるいは、無意識的に出さざる得ないような強い記憶となっているのか。気になるところである。