ヨッシー

フォルトゥナの瞳のヨッシーのレビュー・感想・評価

フォルトゥナの瞳(2019年製作の映画)
2.5
『予告でハードル上げるのやめてくれないかな?』

百田尚樹の同名小説を実写映画化。

死が近づいている人が透けて見える“フォルトゥナの瞳”を持つ青年・木山慎一郎は瞳を使って助けた女性と恋に落ちるが、彼女の体が再び透けて見えてしまう。

監督は『僕は明日、昨日の君とデートする』『坂本のアポロン』などの三木孝宏。
主演は神木隆之介と有村架純。

言わずと知れた現在の邦画の若手では人気実力共にトップクラスの俳優である神木隆之介と有村架純主演ということで興味があった作品。
2人が共演した作品だと個人的に好きなのは『3月のライオン』。これは漫画の実写化の中でもトップクラスの傑作なのでオススメです。

で、今回の『フォルトゥナの瞳』なんだけど、結論から言っちゃば微妙かな。そこまで酷い作品ではないんだけど、どうもいろいろと雑に感じる。

まず、近年の邦画の恋愛映画は”死の運命“というものを軸にしたものが多すぎる。つい最近も『雪の華』が来たばかりでもうこのジャンルに飽きてしまっている。それぞれの作品が他の作品にはない持ち味があればまだ良いんだけど、それもイマイチ感じにくい。
今回の『フォルトゥナの瞳』も同じで他の作品にはない新鮮さはない。

また、ストーリーの展開も先が予測できてしまうものばかりで驚きがない。「ああ、こう来たってことはこのあとこうなるんだろうなぁ」と思った通りにしか話が進まないからあんまり面白くない。

ストーリーや設定のツッコミどころも多い。
フォルトゥナの瞳で運命を変えると代償として心臓発作が起きるという設定だけど、発作が起きるタイミングが運命を変えた直後だったり、変えてからしばらくしてからだったり、まだ変えようと動いている段階でも起きたりと一貫性がない。
また体の透け具合が酷いほど死が近いように見えるけど、それから数日は平気だったりすぐ死んだりとこちらも一貫しない。

そして、クライマックスのサスペンス的な展開はいくらなんでもツッコミどころだらけ。
タクシーで電車を追い越せる?
非常停止ボタンは?
幼稚園を電話一本で止められると思ってるの?もうちょっと計画的に動こうよ。
せっかくのクライマックスなのに雑すぎる。

ただ、これぐらいならまだツッコミどころが多い雑な作品程度。
良いところがないわけでもないし、不快な要素はないから凡作の域で済むんだけど、本作で1番酷いのは予告編。

予告のラストで「2人の運命の結末は、秘密にしてください。」という余計な一言をつけてるんだけど、それを言っちゃったら何か衝撃的な結末があるって分かっちゃうし、ハードルも上がっちゃうじゃん。ある意味ネタバレだよ!
何でこういう余計なことをするのかな?

しかも、その衝撃の展開というのも、はっきり言って中盤ぐらいからなんとなく読めてたし、そこの見せ方もいちいちご丁寧に伏線だったシーンを全部見せていくやり方も上手くない。
それに、だとしたら終盤の有村架純の行動は矛盾してない?あの電車に乗ったのはおかしいでしょ。

そもそも、この話は主人公が“運命を選択する”話だからそのテーマに合うような厳しい選択を迫るべきなのに、結局は自分か愛する人の命の選択だったらそこまで厳しい選択には感じない。
せめてクライマックスはあの子供達と彼女の究極の2択とかの方が厳しいものになるし、もしくはそこから第3の選択肢を自ら掴んでいく物語にしてもよかったと思う。
でも、結局は2択にすらならないものになってしまったのはかなりガッカリ。

役者陣は悪くない。
神木隆之介はもちろん良い演技だったし、他だとDAIGO(最初の方はDAIGOだと気づかなかった)が良い演技を見せてた。
有村架純は悪くはないけど、特に良く見えるような演技ではなかったなぁ。

あと、主人公以外のキャラの心理描写の雑さが気になる。
志尊淳演じる金田を部下としてひき入れる過程を完全に端折ったのは雑すぎる。
木山と同じフォルトゥナの瞳を持ってる医者のキャラも消化不足。

全体的に無難な内容にしようとしたのかどうもベタな話で先が見えてしまうし、細かいところが雑。
良い話と言えなくもないし、良いところもそこそこあるから別に酷い作品とは思わないけど、これでいいのかはかなり疑問だなぁ。
とりあえず予告編は『コーヒーが冷めないうちに』以来の酷い予告なので邦画は宣伝の方法を考え直した方がいいと思う。
ヨッシー

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