マクガフィン

フォルトゥナの瞳のマクガフィンのレビュー・感想・評価

フォルトゥナの瞳(2019年製作の映画)
2.9
冒頭の飛行機事故現場の背景と同化するような、主人公の幼少期の服色の構図に感心する。色を失った原因のメタ的にも。原作未読。

救済する対象者の線引きをする葛藤、救済できない罪悪感による悔恨が募ったり、贖罪をしたり、運命や〈ifの世界〉や人と人との出会いを積み重ねるが、全ての心情の言語化が少しずつ足りないようで、脚本不足は否めない。

中盤は緩やかというか、テンポが遅いというか。短編小説を映画化したかのような、内容の薄さに唖然とすることも。常に一歩引いて見ている感じだが、それ以上、後退させないことは丁寧な描写を積み重ねることと、俳優の配置や演出による三木監督の力量に感心する。また、邦画では珍しく大型クレーンが幾つもの線路を遮断するように倒れた背景がCGなのか区別がつかなくて驚く。

愛の感情の芽生えが閉ざしていた心を開くことで、〈フォルトゥナの瞳〉が開眼する切っ掛けだと思うが、仕事の出世も重なるので分かりにくく、あっさりし過ぎに。そもそも、恋人にしろ、社長にしろ、主人公への愛が余り感じられないから、〈愛と癒し〉が弱く、主人公の様々な贖罪にイマイチ説得力が伴わないのが残念。また、煮え切れない自分の行動に、過去の悔恨をトリガーの一部にすることも同様に。

如何にも三木監督の好きそうな終盤の二段構成は、ドンデン返し的な要素が弱い。警察の職務質問後の、運命を追うことと警察に追われる切迫感も同様に。そんなこんなで、セリフ説明も多過ぎで、蛇足までいかないが、足りないことをラストに纏めた感じに。「ロミオとジュリエット」のような行き違いも後述的で、盛り上がるがエモが足りないのは惜しい。

トータルすると突っ込み処もあるが、何気ない日常の中に緩やかなサスペンスやSFを取り入れるテイストは嫌いではなく、そのライトさに反するような意外な牽引力で、ラストまで飽きさせなかったことが良い。