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⼗年 Ten Years Japanのryacのレビュー・感想・評価

⼗年 Ten Years Japan(2018年製作の映画)
3.7
5作からなるオムニバス短編集。
10年後の日本というテーマは共通なものの、作品によって雰囲気もリアリティラインもバラバラ。上映中に画面サイズが変わったりするのも印象的だった。
どの作品も現代社会を鋭く抉るというよりもむしろ、日常化した非日常的なものを淡々としたタッチで描く独創性に満ちていたと思う。

1番リアリティを感じたのが75歳以上を対象とした安楽死が一般化した社会を描く『PLAN75』、冒頭で作中作として流れるプロモーション映像の『それっぽさ』が凄かった!
『いたずら同盟』はジュブナイル色の強いディストピア物で、管理下であるシステムに反抗する子供たちの姿が感動的。いじめっ子がルールを守る側で、規律に従わない子が周りから孤立しているという立場がすごく現代っぽくてハッとさせられた。

そして個人的に最も完成度が高いと思ったのが最終章である『美しい国』。
徴兵制の復活した日本を舞台に、防衛省のポスターをめぐる話。Jアラートが効果的に演出として使用されていたりと、全5作の中で最も批評性の高い作品だった。
最後の最後に貼られるポスターのデザインに込められた痛烈な皮肉が素晴らしい!

どの作品もラストの「結末」、最終的にこの物語にどう決着がついたのかは見せないつくりになっていて、正直もっと見せてくれと思わなくもなかったけど、これはこれで潔くていいかもしれない。
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