きり

天国でまた会おうのきりのレビュー・感想・評価

天国でまた会おう(2017年製作の映画)
4.2
きっかけは戦争。
けれど、その戦争さえ終わったのか否か。


不遇の現実と復讐の端々に散りばめられた人間の善良さと愚直さが美しく、それ以上に痛々しく、目が離せない作品でした。
戦友に振り回され、思うところがありながらも寄り添い続け、新しい出会いすら自らフイにしてしまう元兵士が主人公の一人です。彼も悪事をはたらくけれど、思わず同情的になってしまう場面が多くありました。けれどそうであればこそ、彼はあのラストを迎えられたのかな、とも。

規則を破り、法を犯す人間がこの作品には多く登場します。勿論利益のためにそうする悪人もいれば、ひどく人間的な理由で何かを見逃すために破る者もいる。
善良さと感情的であることの境目や、それを越境することの良し悪しについて考えさせられました。


ところで印象的で美しいシーンが多い中、僅かな尺でありながらも妻と不倫をしていた上司が逆境に陥った際、淡々とこれ以上はついていけないと意思表示をした一人の男のシーンが心に残っています。
物語展開に直接の関わりはなく、人物描写としておそらく盛り込まれた場面かと思いますが、殴りも罵りもせず、知らなかったと弁明する上司にただ背を向ける彼の表情ひとつから、様々なことを読み取ろうとしている自分がいました。
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