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天国でまた会おうのsacoのレビュー・感想・評価

天国でまた会おう(2017年製作の映画)
4.0
原作が『その女アレックス』のピエール・ルメートル著と知ったら、うずうずして速攻で文庫上下を読んだ。
珍しくミステリーじゃなかったけど面白かった。
映画もジャン=ピエール・ジュネ監督や『パンズ・ラビリンス』のギレルモ監督の雰囲気にも似ていい感じ。
脚本監督のアルベール・デュポンテルは役者も兼任している。

第一次世界大戦終結間近、フランス軍上官の卑劣な画策で生き埋めになったアルベール(アルベール・デュポンテル)を救った青年兵士エドゥアール(ナウエル・ペレーズ・ビスカヤート)は、直後に爆撃を受け顔下半分と声を失った。パリに帰還したふたりを待っていたのは、戦没者は称えるが復員兵には冷たい世間。仕事も恋人も失ったアルベール、厳格な父を嫌い家に帰る事を拒むエドゥアールは戦死を偽装する。

人生を戦争によって打ち砕かれた彼らは、戦争に関わる全ての罪を断罪するべく国を相手に壮大で大胆な詐欺を企てるが、その裏に隠されたドラマはあまりにも切ない。
奇想天外で寓話的な展開は先が読めず、緊張感で目が離せなくなる。
シーン毎に彼が被る芸術的な仮面は滑稽で、優美で、瞳は雄弁だ。
ほぼ仮面を被ったまま目と動作だけで心情を表現するナウエルの演技は必見。
クライマックスではその瞳に胸締め付けられ感動せずにはいられない。

終盤、原作とは違う展開になるが私はこのハリウッド的な大団円も納得出来た。
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