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コリン LOVE OF THE DEADのdm10foreverのレビュー・感想・評価

コリン LOVE OF THE DEAD(2008年製作の映画)
3.7
【その心意気を買った!!】

「低予算」ということが全面に押し出されているせいで、よくも悪くも色眼鏡で見られてしまう作品となりました。
きっかけはどうあれ、注目を集めたという点では成功ではないでしょうか。

むしろ私が注目したのはこの映画の視点です。ゾンビ映画は今まで沢山観てきましたし、主人公がゾンビにやられてしまうことも多々ありました。
でもそれはあくまでも「人間主眼」であり、ゾンビにやられた人は「残念。おつかれ」という位置づけでしかなかったのです。
しかしそこには「そのゾンビ達」にも人間だった頃の生活があったわけで、ゾンビにさえならなきゃ人間扱いされたわけで、でもゾンビ映画にそういうセンチメンタル自体が求められていないわけで・・・。

そのセンチメンタルの部分にスポットを当てたのがこの映画です。今までありそうでなかった映画でしたね。ゾンビ映画をみて「ゾンビ側」から人間を疎ましく思ったのは初めてでした。カメラワークや機材の事に批判があった書き込みも読みました。勿論低予算と言ってしまえばそれまでかもしれませんし、実際金をかけようと思えばかけれたかもしれません。

でもね、そうじゃないんです、この映画の良さは。
結論から言うとお金をかけちゃいけなかったんです。
お金をかけて特殊メークやカメラワークや編集に凝ってはいけないんです。
あんな荒削りな、一瞬何が映ってんのかわかんないくらいがあの映画のテーマなんです。
人間の日常なんて、一瞬一瞬を完璧に動けたり捉えたりすることなんて出来ないし
そんな瞬間のほうが準備された(創られた)瞬間に思えてしまいませんか?
たまに人から見たら意味不明な行動を取ってみたり、取るに足らないことに執着してみたり、自分の身の回りで起きている出来事なのに見逃したりと、不完全だからこそリアルな人間味が産まれるんだと思います。
ここに映し出される映像は人間とゾンビの狭間で何とか人間を保とうとするコリンの不完全な行動が見事に映し出されていると思います。逆にお金をかけて丁寧に描写されていたら「映画の中にコリンがいる」だけになってしまいます。

この荒削りの映画で台詞を殆ど入れなかったというのも高評価でした。普通、設定やスケールの弱さを補おうと考えたら、台詞でカバーしようと考えそうなものですが、極端に台詞を省き、表情や動きでコリンの感情を伝えるということに挑戦していました。

お金をかけなくてもここまでいろんなことに挑戦できるんだという、その心意気を買いました。僕はこの映画好きですよ。
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