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ジョンソンにはうんざりのTaiRaのレビュー・感想・評価

ジョンソンにはうんざり(1938年製作の映画)
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1938年、オーソン・ウェルズが『市民ケーン』より前に制作した映像作品。

演劇のオープニングや幕間に入れる予定で撮影したが結局使わなかったとか。編集すらされてない状態でウェルズの別荘に保管されてたが火災で失われる。だが数年前イタリアでフィルムが発見された。主演はジョセフ・コットンで映画の出演はこれが初だった。ロイドやキートンの影響受けたサイレント喜劇という感じか。コットンは人妻を寝取っちゃう間男の役。寝取られた夫が間男をどこまでも追いかけて行く追跡劇。現状、観賞出来る作品は全テイクを入れてあるものなので同じカットが何回も繰り返される。オフショットやNGカットも入ってる。試行錯誤して撮ってるというのは分かる。即興的だったのかもしれない。作品の内容よりもカメラの後ろにいるであろう23歳頃のウェルズを夢想して楽しむ。映画作家としての才能はまだ開花してない感じだけど画面の手前と奥で同時進行するアクションの見せ方などは彼っぽいかも。画面内のレイヤーというか。ニューヨークの摩天楼を背景にした屋上の追跡劇なんかはカッコいいショットも多かった。3年後には『市民ケーン』撮ってると思うと凄い。ウェルズはこれ撮った直後くらいに例の『宇宙戦争』ラジオドラマを作ってる。ほんと才気走った人だな。
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