黒ろぐお

マックイーン:モードの反逆児の黒ろぐおのレビュー・感想・評価

4.1
自分がやりたいこと、妥協できないこと、人を楽しませること、そして、既成概念にとらわれないこと。

こういったビジョンがバチバチにあるから、世界中を魅了する事が出来るわけだけど、やっぱそれをビジネスに落とし込む過程で、その落とし所の探し方って針山の一本に糸を通すようなもんなんだなって思った。

リーことマックイーンは、エモーショナルな作り手のプライドと、ビジネスマンとしての資質、どちらも完璧に持ち合わせているから、その途方もなく、永遠に続くかと思われる針穴探しをストイックに行い、自分自身を擦り減らしてしまうんだなあと。

やりたいことやります、な天才って意外に疲れなくて、
ビジネスマン気質も振り切れたら明確な目標に邁進、後は自分との戦いみたいなとこがある。

そんな中で彼の、他者への責任、社会における自分というアイデンティティの永続的放出、「飽き」や「媚び」や「期待」への返答など、のしかかるプレッシャーは計り知れない。


よく、営業側とクライアントとか、広報と製作側が揉めるってあるけど、彼は彼自身にこのフラストレーションを抱え込んでいた。想像しただけで吐きそうになる。
それだけに、家族や親しい人に依存するような形で接し、自分を保っていたんだと思う。

本当の孤独を、彼は見た。
そしてそこで見たもので、服を編んだ。
「孤高」という言葉の意味を、少し理解出来た気がした。