Miko

マックイーン:モードの反逆児のMikoのレビュー・感想・評価

4.0
@「日曜のランチをした感じでショーから帰ってほしくない
最悪な気分か 浮かれた気分で会場を出てほしい
どっちでもいい
何も感じなきゃ僕の仕事は失敗
そういうこと」

蝕まれていくメンタル。
アートからそれを取り除くことは不可能なのか。

公開時から観たくて仕方がなかった作品。
奇抜な作品を発表するリー・アレキサンダー・マックイーンさんのことは、詳しく知ることはなかった。
まだ私がファッションに疎い頃に亡くなられたので……。
予備知識無くて大丈夫かな?と思っていたのだけれど、今作は彼の人生をしっかりと(今作に入りきらない物もあるだろうけど)書いてくださり、にわかにも分かり易かった。

今作はやはり、前半と後半の違いが恐ろしい。
前半はキラキラして楽しそうに洋服を創る彼にこちらもワクワクして見ていた。
《ハイランド・レイプ》はまさに、注目を浴びるのにうってつけ。
「たかが服だ」とチャーミングに笑う彼に朗らかな気持ちになっていた。

そして後半。
後半は完全にリーさんの映像は少なくなり、友人のインタビューが多くなる。
苛立ちを隠せずやつれていくリーさんを見て泣けてしまう。
そんな中の《No.13》のロボットとスプレーには、鳥肌が立った。
「自分の作品で泣けたのは初めて」と狂喜乱舞するリーさんを見れて安心した。

一番気になったのは、《ヴォス》
精神病棟らしい異空間をマジックミラーで作り上げた。
このコレクションは見たことがあって、正直苛立ちを隠せなかった。
……でも、今作を観て彼がこれを創った理由が分かった。
もう頭がおかしくて、彼の叫びにも似たものだったんだろうなと感じる。
ただこのコレクションは凄く好き。

ラストの《プラトンのアトランティス島》の不気味さと美しさ、美醜は圧巻。
呆然としてしまった。
あんなものを生で見られた人間が羨ましい。
そして、モデルの言葉が素敵だった。
「すごいモデル軍団がついている
みんなその気持ちで挑んでいた」

生きる希望を失うのは、やはり愛する人間の死なのだと感じた。
リー・アレキサンダー・マックイーンさんの喪失は計り知れない。
素敵な物を創り出してくれた彼が安らかにあの世にいることを願いたい。

とても最高なものを見せていただきました。

cc/恋をするように服を作り命まで捧げた、ドラマより劇的な人生