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沖縄スパイ戦史のmuraのレビュー・感想・評価

沖縄スパイ戦史(2018年製作の映画)
4.6
余韻覚めないうちの訃報。翁長知事の冥福を祈りたい。

知らない。ホント、悲しいぐらいに知らない。

戦史ドキュメンタリー。公文書、日記、映像、音声、そして証言…史料をふんだんに示しながら、沖縄の「秘史」を明らかにしていく。

秘密部隊・護郷隊。陸軍中野学校出身の22歳の青年将校2人が率いる千人の部隊。地元の10代の少年たちを集めてゲリラ戦、スパイ戦に従事させる。そして少年たちは地獄の戦闘に巻き込まれる。

一方で波照間島の住民疎開。陸軍中野学校出身の偽名の軍曹が住民を西表島に強制的に疎開させる。住民はそこでマラリアに感染。戦死者はいないにもかかわらず、病死者が五百人以上となる。軍の目的は波照間島の土地と家畜を摂取すること。

誰が悪い、誰がひどいという問題をこえて、軍部、また社会の「構造」の問題をあぶり出す。となると敵はアメリカ兵だけでなく、日本兵であり、そして同郷の住人であり…

断罪や改善がしにくい「構造」の問題を明らかにしたうえで、現在と比較する。そこから浮かぶ疑問は、はたして軍隊(自衛隊)は国民を守るものか、国家を守るものか。沖縄戦では国民ではなく国家を守ろうとした。では、もし次があるならどうなるのか。八重山諸島には自衛隊が次々と配備されているけれど。

過去を知り、未来に生かす…この映画がやろうとしていることは極めて単純。一方で、文書はない、記録はない、日記はなくした…という人たちもいて…

この前に見た映画はスター・ウォーズのスピンオフ作品。そのシリーズもやめられないけど、この三上智恵の沖縄ドキュメンタリーシリーズもやめられない。
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