木葉

沖縄スパイ戦史の木葉のレビュー・感想・評価

沖縄スパイ戦史(2018年製作の映画)
4.2
沖縄戦の犠牲者たちの怒り、底知れない闇、憎しみを肌で感じるドキュメンタリーである。
沖縄戦の裏側を証言者の声、残っている写真から、戦争が齎す負の遺産を、一言では済ませられない沖縄の人々の肉声、痛み、心の闇、を浮かび上がらせる。
1945年6月、米軍が上陸した沖縄北部では裏の戦争が続いていた。陸軍中野学校出身のエリート青年将校たちが本土から配属され、そして沖縄の十代半ばの少年たちを軍隊(護郷隊)として組織する。陸軍中野学校からは各島に配置され、偽名を使い身分を隠したものもいる。彼らの作戦は沖縄の全住民を巻き込み、やがて大きな惨劇を生むことになる。
米軍に追い込まれ、沖縄に住む住民同士が監視し合い、スパイと思われる者は殺し、隊員として使えなくなった者も殺される。
足かせになったり米軍の捕虜になったりすると大変だから、マラリアの島に疎開させ、マラリアで亡くなった人は3000人以上に上る。
戦争での国のあり方は、住民は守るものではなく、国家を維持する為に、敵を滅ぼすための道具でしかない。
原爆投下、沖縄戦、敗戦の反省が活かしきれていない今、国は南西諸島で進められている自衛隊補強、ミサイル基地配備を強行している。日本軍の過ちを孕んだままの野外令、自衛隊法、特定秘密保護法の危険性に、鋭い戦慄を覚えてしまう。
ある人は生まれて来なければ良かったと言う。戦争経験者が亡くなっていく中、戦争は人を人でなくし何もかも奪うことの貴重な残映であり、引き継がれなければならない戒めである。
木葉

木葉