Jin

沖縄スパイ戦史のJinのレビュー・感想・評価

沖縄スパイ戦史(2018年製作の映画)
3.8
“今よ、私がや、マラリアんこと映画にして伝えようと思っちょる”


戦後70年、語られてこなかった沖縄北部の遊撃戦。スパイ活動や日本人同士の虐殺を明らかにしたドキュメンタリー。

作りはオーソドックスなドキュメンタリー。ナレーションを中心に、人々へのインタビューから真実を見出していく。戦争記念資料館みたい。


沖縄戦に少年兵が投入されていたのは知っていたが、南部と違い北部のゲリラ戦がこんなにも激しかったとは知らなかった。

遊撃のスペシャリストとして陸軍中野学校から派遣された青年将校たちが、地元民を掌握し、戦わせていた。

八重山に至っては、数ヶ月偽名で教師として活動したあと、突然島民を疎開させるなど、その動きは本当にスパイ。こんなことがあったなんて。

西表島や石垣島の一部にはマラリアが蔓延し、戦争ではなく疎開先の病気で大勢の人が亡くなっていた。
「軍曹の行いは許しても、忘れない」
建てられた記念碑の言葉が重くて怖い。

軍人たちが全て悪いと思いがちだが、裏切り者リストに載って暗殺された人々のほとんどは、近隣住民のリークによるものだった。
そして、島民はリークした人を覚えている。その人も生きている。その恐怖。

ポルポト政権の話のようだった。
虐殺に関わった人たちが近くで紛れて生きている。
その秘密を守りながら生きる人たちの苦しさ。懐の深さ。

人間の怖さをまざまざと見せつけられた。
Jin

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