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沖縄スパイ戦史のHKのレビュー・感想・評価

沖縄スパイ戦史(2018年製作の映画)
3.7
「標的の村」「標的の島 風かたか」などの三上智恵と、大矢英代による沖縄戦における陸軍中野学校の実態を描いたドキュメンタリー映画

民間人含む20万人余りが亡くなった沖縄戦。その戦いには陸軍中野学校により秘密裏に動員された10代半ばの少年たちで編成された部隊「護郷隊」によるゲリラ戦が展開されていた。さらには、国体護持を優先し、島民をマラリアが蔓延している西表島に隔離するという凶行にも及んだ。沖縄で行われていたゲリラ戦やスパイ戦、さらには陸軍中野学校の動向を描く。

沖縄戦の資料なども、当時の惨状を克明に記すために公開した作品。劇中で観ることができる当時の写真には、爆撃などを受けて顔面が崩れてしまった当時の少年兵の写真が一番生々しく、思い出すだけでも吐き気を誘う。

戦争は悲惨なものだ。ドキュメンタリー映画においてそのようなメッセージ性をもって伝えることは今の時代でも正しいのかもしれませんね。実際に当時駆り出された少年兵の方々が辛いながらも当時の嫌な記憶をしっかりとインタビューで伝えている部分も心に来ました。

基本的には、本土決戦などになったとしても、あくまで国体護持に専念し、国民などの副次的なものは二の次として扱っているのは何ということか。民主主義がなっていない。当時の大日本帝国がどれだけ狂っているのかが再確認できる内容でした。

ここから、現在の自衛隊の実態につなげるような終盤の展開もこの映画を観た人たちの自衛隊に対する価値観を変えるような結末になっていていいのではないのでしょうか。安保条約でアメリカの基地が駐在しているのと、日本の自衛隊が駐在しているのとどっちがいいのか。分からなくなってきますね。

それでも沖縄県は本当にお隣が朝鮮半島で中国に一番近い場所にある以上、上陸されるならまずここになってしまう。どう足掻こうとも本土決戦が行われる前に最前線になってしまうのが痛手と言いますか、それでも回避できる方法が見つからないというのが無念と言いますかね。

やはり、ゲリラ戦などが悲惨なことになるというのはよくよく分かって嫌ですね。ああも森や茂み、泥のぬかるみに入ってしまうと病原菌みたいなものに感染して破傷風になったりしないのかと心配になってしまいます。

幼気な子供たちですら利用して戦況を有利にしようとする陸軍中野学校の将校たちの人間が考えたとは思えない残虐な作戦。存分に味わえてよかったと思いますね。

戦争にはできる限りなってほしくないと痛切に願うばかりです。
HK

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