マーク

アラジンのマークのネタバレレビュー・内容・結末

アラジン(2019年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

ダンスも歌も妙にヒップホップに寄りすぎていて、カルチャラル的に残念だった。
美女と野獣や眠りの森の美女の舞踏会シーンでジャズやヒップホップをやらないように、もう少しインドのダンスをリスペクトして欲しかった。

そして最近のディズニーお得意の「色んな人種の人でキャスティングする」方針が本作では薄く、例えば主要キャストに白人やアジア人やブラックを肌の色そのままに出演させてくるかと思ったが、「やはり」それは無かった。

つまり、彼らの根本的感覚はやはり白人優位で差別的だということだ。
そもそも、人種問わず世界の文化や伝統に対し同じようにリスペクトがあれば、無理やり中世の貴族役にブラックをキャスティングしたりはしない。不自然で目立つから。
アジアが舞台の歴史映画ならアジア人を起用し、アラビアやインドが舞台の歴史映画なら、それぞれの地域の顔立ちのキャストで構成すれば良いだけだ。

それを差別だと思うのは、ヨーロッパ中世の宮廷が上位的なものだという無意識の自己認識があって、「そこに入れてやらないのは差別だ」と思うからだ。この傲慢さになぜ彼ら自身は気付かないのだろうか?

アラジンの宮殿に肌の真っ白な人が居ないのは?同じ概念なら登場する筈では??
今回そこに注意を払っていないことがすべてを物語っているではないか。
今回は無理矢理の人種超越キャスティングが無かったので観易かったが、これで彼らの根本にある差別思想が裏付けられたことになる。

全体的には、ディズニーらしい舞台や映像の美しさがあった。原作の舞台は実は中国だというが、多分ここではアラブ~インドあたりの国という設定なのだろう。
アラビアのゴージャス感や神秘性とインドの色彩感をうまくミックスして、美しい町並みや衣装を創り上げた。

キャストとしては、ウィル・スミスは悪い選択だとは思わないしパレードのシーンは素晴らしかったが、ジーニーというよりウィル・スミスであって、彼の自己主張が随所に見られた。

アラジンもまたアラジンらしさが薄いキャスティングであった。アラジンはインドの貧しい青年なのだから、それにしては肉付きが良すぎて動きが鈍かった(ヒップホップは踊れるようだ)。アラジンには少年のような純粋さ、身のこなしが必須だったが、この俳優が完全に大人の男だったので純粋さが目に見えず、ジャスミンが惹かれる理由がいまいちわからなくなってしまった。

ジャスミンは少し太りすぎていた。なんとかカバーする衣装をデザインしていたようだが、ウエストの無さが際立った。歌の追加もあり、アニメよりもキャラクターの重要性を増していた(またディズニー得意のフェミニズム)が、それが却って大筋の不自然さを際立たせた。「そんなに頭が良いのにアラジンを選ぶのか!?」というのは驚きでさえある。エンディングでヒップホップ的な動きを見せられたが興醒めである。

ジャファーはあまり憎めない程にカッコ良く、声も高く、悪役としてはかなり物足りなかった。アニメのようなねずみ男を期待していた。

個人的には求婚に来たアホな王子が気に入った。
また、パレード前のスパイスが崩れるシーンが素晴らしい。音もない静寂からあのパレードの派手な音楽、映像美まで一気にうわっと盛り上げていくグルーヴ感は圧巻だった。
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