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アラジンのMOCOのレビュー・感想・評価

アラジン(2019年製作の映画)
4.0
「時には冒険もしなきゃ」

「アラビアンナイト(千夜一夜物語)」でメジャーなお話は「アリババと40人の盗賊」「アラジンと魔法のランプ」「空飛ぶじゅうたん」「シンドバッドの冒険」なのですが、この4つのお話は元々「アラビアンナイト」には含まれてはいないお話って知っています?
「千夜一夜物語」とは沢山のお話という比喩なのですが、1700年代初め伝えられたフランス人が1001のお話にこだわって加えたお話なのです。

 60代以上の人ならエレベーターの扉に「ひらけゴマ」の呪文を口にしたり、ランプがわりにヤカンを擦った思い出があると思うのですが、その後の世代にそんな思い出があるかは分かりません。

「アラビアンナイト」の「アラジン」にサルやオウムは出てこないことや『魔法のじゅうたん』は別のお話だと知っている人が何人いるのか疑問に思いながらの鑑賞になってしまいました(年代なのですね)。
 アラジンは指輪の魔神とランプの魔神の二人を従える、心踊るお話です、閉じ込められた洞窟からは指輪の魔神に助け出してもらうのですが、ディズニーのお話には指輪の魔神は出てきません。さらに言うならジーニーという魔神の名前もディズニー独自のものです。
 何より主人公のアラジンは母と暮らす貧しい少年という設定なのです。こそ泥ではないのです。
 いずれにせよ、どんな理由があったとしてもこそ泥が幸福を手に入れるのはいけないのです。ディズニーは間違っているのです。

 映画が原作と違う事は、よくあることなのですが、こういった名著をここまで変えて良いのでしょうか。
 戦略的にグッズや絵本を販売していくディズニーだけに、ディズニーブックの一つとして販売される「アラジン」が本屋の店頭にならび、本家本元の「アラビアンナイト」の絵本は本屋の店頭から閉め出されてしまっているのです。
 ディズニーによって改編された「アラジン」をオリジナルと思っている人が圧倒的に多いことも間違いなのです。私の周りの20代30代でアラビアンナイトの「アラジンと魔法のランプ」を知っている人は皆無なのです。

 ディズニーの「アラジン」はアニメを含めて、まともに観たのは今回が初めてです、このお話はウィル・スミスの好演で、話題に正比例して面白かったことは認めてスコアーは4.0なのですが、私(歳をとった私)にはどうしても子供の頃に親しんだ原作の面白さを壊しているとしか思えないのです。

 映画を観て「原作を読んでみたい」と思う子供や「読み直してみようかな」と思う大人が多く出現して、原作の「アラジンと魔法のランプ」の面白さを知ってもらいたいと願ってしまいます。

 子供の頃は母親や父親が夜、寝る前に読んでくれる絵本が楽しみでした。私の幼い頃は創作絵本は少なく童話の絵本が主流でした。なかでも「花咲かじいさん」「桃太郎」「マッチ売りの少女」「アリババと40人の盗賊」「アラジンと魔法のランプ」「ジャックと豆の木」は強い印象が残っています。
 焚き火の灰を撒いてみたくなったり、マッチを擦ってみたくなったり、デパートの自動ドアやエレベーターのドアに「開けゴマ」と呟いてみたり、ヤカンを擦ってみたりとかは、もう時代ではないのでしょう?
 あの頃ドキドキしながら聴いていた圧倒的に面白かった「アラジンと魔法のランプ」の絵本は、手放すともう簡単には手に入らない本になっていることは寂しいことです。
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