NAO141

七つの会議のNAO141のレビュー・感想・評価

七つの会議(2018年製作の映画)
4.0
ドラマ版もある「七つの会議」。
個人的にはドラマ版の方が好き。
池井戸潤作品はどれも素晴らしいのだが、重厚かつ深いテーマの作品を2時間の映画にするのは難しいように思う。
深いテーマがある作品だからこそ、ドラマでじっくりと描いてほしい(映画だと中身が薄くなってしまうように感じるのは私だけだろうか…)。

とはいえ、やはり池井戸潤作品は面白い!深い!熱い!
正義を語ることの難しさ。
そもそも正義とは何なのか。
問題は個人なのか組織なのか。
「七つの会議」、タイトルのカイギとは〈懐疑〉でもあり、目の前の現状に対して疑いや違和感を持ち続け、本当にそれが正しいことなのかを考え続ける大切さ、これがこの作品の一つのテーマでもあると思う。

クライマックスの御前会議は緊張感があり、八角(野村萬斎)・北川(香川照之)の共闘には胸が熱くなる。
20年前、冷酷な上司である梨田(鹿賀丈史)の指示に背いた八角と従った北川。対極の立場になったものの、最後は正しいことをする、不正を暴く、それが「自分たちのノルマだ!」として共闘する2人が熱い!
八角のように目の前で上司に背くことも勇気がいるだろうが、北川のように過去の自身の過ちを認め、いまの地位を失うことも厭わず、組織の体質を正すために
元上司と対峙するということも勇気がいることだと思う。

この作品が深く、より現実味を感じるのは、八角・北川が不正を暴いたから組織がクリーンになりました…と単純に終わらないところ。
組織の実態がわかっても不正を世間に公表しない徳山社長(北大路欣也)。
「この会議に議事録は存在しない」
重い、深い、そして…不快…。
宮野社長(橋爪功)は告訴され、梨田取締役は地方の子会社に出向、北川部長は退職。しかし徳山社長は変わらずゼノックスグループの絶対的君主。
この完全にスッキリしない結末こそが会社(組織)、いや、社会というものであろうか…。やはりそうした違和感に対して〈懐疑〉することが大切だと思う。

「半沢直樹」「下町ロケット」「陸王」などに登場する池井戸潤作品には欠かせない常連キャストが多数出演していることも嬉しい映画であり、ラストの八角のセリフは考えさせられる。
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