クリンクル

ワイルド・スピード/スーパーコンボのクリンクルのレビュー・感想・評価

4.8
『バイス』でジョークとして冷ややかに扱われるのを笑いつつも、公開されたら観に行くワイルドスピードシリーズ
自分のための映画じゃないとはわかっていても画面は派手なのでそれなりに楽しめていた

本作はと言うとメチャクチャ楽しんでしまった
前作のハン殺害問題やあの騒動もあり、大分胡散臭くなったファミリーという言葉を再びシリーズに引き戻してくれた作品になったんじゃないかと思う
ライアンレイノルズやケビンハートは若干滑ってるんじゃ?という欠点はあるものの、濃すぎるアクションの丁度いい緩和剤に感じるほどそれ以外の部分が最高

まずはアクション。クライマックス部分を入れ替えたという話もあるように全てのアクションが山場
正直言って食傷気味にもなったが一本の映画でステイサムとロック様の映画を100本観た後のような満足感を持って劇場を出ることができた
ドウェインジョンソンは自身のイメージ通りのアメリカマッチョキャラで暴れ、ステイサムはスタイリッシュにイメージ通りの紳士的に戦う
これが凸凹コンビとしてのアクションだけでなく、話しにも関わってくるのが本作の見事な所
血の繋がりの家族のために動くショウと家族を捨てたホブス、そして間に入るのがヴァネッサカービー演じるハッティ
2人のアクションスターよりも魅力的に映ってるヴァネッサカービーの話は置いておくとして、この家族というものの描き方が非常に誠実だと感じた
シリーズ通して使われている言葉だが現実同様に映画内でも胡散臭さを覚えていた
それはホブスが家族を捨てた理由と重なっていて、その言葉は搾取の形を取ることに使われるからだ
つまりそこでは人間を生産性で計る行為を行なっているのである
悪役で半機械のイドリスエルバがロシアの科学者に「人間は小銭程度の価値しかない」と話すように生産性で人間を見る奴に火炎放射器を食らわすのが今回のワイルドスピードだ
ガワは完全にバカ映画だけれどもそういう細かな所に真にグッとくる作品になっている
デヴィットリーチ監督はデッドプール2でもガワはバカ映画のファミリー映画を撮ったこともあり、それが監督の作家性なのだと再認識

ただの空っぽで派手な映画ではなく、芯の通った良心的でいまの日本にも響くテーマを持った映画だった