tetsu0615

Diner ダイナーのtetsu0615のネタバレレビュー・内容・結末

Diner ダイナー(2019年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

十分に楽しめました

蜷川実花監督らしい極彩色豊かな画面造りとエキセントリックなBGMとカット、見るからにクセの強そうな殺し屋たちと彼らがいつ爆発するか分からない緊張感にワクワクさせる殺し屋エンターテイメント!
原作とは大分違いそうだし、腑に落ちない部分(カナコの心境およびボンベロとの関係など)もあるが概ね楽しめた。

怪しいバイトに応募したばかりにカナコの人生は劇的に変化する。彼女がウエイトレスして売られたのは殺し屋専用のダイナー。そこに王として君臨するボンベロと訪れる殺し屋たち…という作品

オープニングから集団行動を背景に、舞台のように描かれるカナコの人生。
個人的には演出過多でもうちょっと抑えても良いのでは?なんて思ったり…
何も画的に無い状態では面白くないとは思うが、それでも…

ポストカードからスペインに焦がれるという突然の動機からお金が必要になり怪しいバイトへ…という少々強引な展開から(良くも悪くも人生は些細なことがきっかけで変わるということでよろしいか?)彼女のぶっ飛んだ世界への入口が開いていく…

クレーンゲームと実際に彼女が吊られてしまう場面とのリンクとかいるかな?とか思いつつも、いよいよ舞台はダイナーへと移行する。
テーブルに彩られた食材たち、怪しげな雰囲気を放つダイナーの装飾など雰囲気は上々。そして藤原竜也演じるボンベロの演説。登場からボンベロのクセの強さが際立つシークエンスだ。
カナコは困惑と恐怖にさらされながら、ウエイトレスとして働くことに…
ここで過去にいたウエイトレスの写真が喋ったりする演出とかがイマイチだなぁ、要らないなぁと思いつつ…。ハイなBGMと共に描かれるカナコのブラシでの床掃除シーンとか少々演出を盛りすぎ?(楽しめれば正解なのだろうが、この辺は好みには合わなかった。次第に気にならなくなったけど)

窪田正孝演じるスキンの人の良さそうな雰囲気、本郷奏多演じるキッドのぶっ飛んだ設定など殺し屋たちのキャラクターはなかなか面白い。(名前出す時の演出が少し過剰にも思えた。後半は慣れたけど)

ボンベロも「王だ!」と宣言しているわりにやらせたい放題なのは仕方ないことなのか?などと疑問も

スキンを疑っていたわりに、キッドの変声にアッサリ騙されるのも…まあそういう子だから仕方ないか

ダイナーで過ごすうちに少しずつそんなカナコの精神も変化していく…のだがこの辺の心境の変化が良く分からない。極限状態ゆえの覚醒?少なくともここに置いてくれているボンベロの存在?理不尽な命のやり取りへの反発?が彼女を変えたのかもしれないがその辺がよく分からない。
他人はおろか、自分自身すら信じられない彼女が、どこにも信用が置けない世界に放り込まれたことで変わっていったのだろうけど、その辺があまり分からないかなぁ…
そして、やらかしまくっている(キッドに騙され、スキンに対して勝手なことをする)カナコをそのまま雇うボンベロの心境の変化も良く分からない。ボンベロのバックグラウンドなんてものが描かれればなにか分かるのかもしれないがその辺もない。
というより、約二時間に納めるにあたり各々のキャラクターを深く描く時間が無いのが惜しいところか。小栗旬や土屋アンナは殺しを発揮する前に退場(特に小栗旬なんてクワガタ食べただけ)という感じで

クライマックスで描かれるバトルシーンも弾丸飛び交い、装飾の花びらやスプリンクラーの水が舞い、時にアクロバティックさを見せるバトルは美しくはあるものの、戦闘の行く末や戦闘での立ち回り、闘いの導線がよく分からないまま処理され勿体無い

亡くなった組織のボスに蜷川幸雄を採用したのは驚き

美しく鮮やかな色彩とエキセントリックなBGM、場面場面で繰り広げられる美しいカットと個性豊かなキャラクターを楽しむ殺し屋エンターテイメント作品
tetsu0615

tetsu0615