なやら

歓びの喘ぎ 処女を襲うのなやらのレビュー・感想・評価

歓びの喘ぎ 処女を襲う(1981年製作の映画)
4.0
虚無に憑かれた男の緩慢な自殺劇。男を演じる下元史朗がとてもよい。出口の見えぬ己の人生への抵抗として為されるセックス、禁忌侵犯、坊主頭。しかし何をやってもどん詰まり、行き場の無い怒りと哀しみ……「襲られた女」とは真反対のキャラクターで魅せる。新宿駅のシーンにおける、右翼団体の街宣を見つめた眼差しがとてもすばらしい。
東京でもがく下元と並行して、公害に蝕まれた漁村(下元の故郷)のパートが語られ、最終盤で2つのパートが悲痛な連結を見せる。強引な持って行き方してるな……とも思うけど、「そうなるしかなかった」という切実さが十分感じられる。
とにかくやるせない話である分、幼馴染の役場職員の清潔な心、兄妹での自転車二人乗りなど、わずかに登場する美しいシーンにはいとも簡単に涙を誘われてしまう。
ラストも最高。漂う悲愴感とは裏腹、あの魚がふっくらしていて美味しそうなのが胸に来るし、下元がわざわざあのように食卓を飾り立てたのだと思うと泣ける。
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