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記者たち~衝撃と畏怖の真実~のBellenのレビュー・感想・評価

3.5
●9・11からイラク戦争に至るまでの流れの中で、NYTimesやCNN等の大手メディアが、愛国心にアプローチする政府の代弁者となる中において、イラク戦争突入への疑義を感じる通信社(ナイト・リッダー社)の記者ジョナサン・ランデーとウォーレン・ストロベルが、反証材料を集めることを描いたドキュメンタリー映画(史実)。

●原題の「Shock and Awe」はイラク戦争を開始した際の空爆の作戦名とのこと。

●大手メディアが政権中枢からコメントを取る中で、二人の記者が、政府高官や情報機関、国家議員等に草の根的にアプローチをしながら、政府が掲げる戦争開始の正当性(イラクによる大量破壊兵器の所有)が、戦争突入という結論ありきで”造られた”ストーリーだと検証していくお話。大手メディアVS当該通信社の情報の取り方の対比が興味深かった。特に、一端の政府職員が、正義感(=ベトナム戦争の二の轍を踏んではいけない。無実な米人兵の戦争死は許されない)から、匿名でリークをするという点も、日本よりも、個社のメディア記者と個人の政府職員(官僚)の繋がりの強さを感じられた点も面白かった。

●全体的に、起承転結には欠けるものの、実情感がしっかりと出せていた点は逆に評価出来る。この手の映画はいかにリアリティをもって描けるかが大事だと思うが、当時のブッシュ大統領はパウエル・ラムズフェルド等の実際の映像を所々に挟むことによって、地に足についた仕上がりとなっている。

●ベトナム戦争に突入する中での情報戦を描いた『ペンタゴン・ペッパーズ」とは通じるところがあると感じた。

●結論としては、戦争に踏み切るような報道をしたNYタイムズ紙が謝罪記事を書いた点や、結局大量破壊兵器が見つかっていない点等を材料に、当該開戦が明らかな誤りであったというような主張が見え隠れする。ただし、戦争の正当性を考える上では、9・11のような事件を受け止めた国民が、
・アメリカ国民としてのナショナリティが高揚させる必要があったこと
・地政学上(中東)のイラクの位置付け・戦争の結果の功罪
・軍需産業の維持・発展
という目線も含めて、総合的に考える必要があるのではないかとも思った。

●見どころのシーンは、新聞社のボスの社内での演説。「政府が何かを発表する際に記者として必要な姿勢はただ1つだけ。「Is it real?」の精神だ」。
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