ルイまる子

記者たち~衝撃と畏怖の真実~のルイまる子のレビュー・感想・評価

4.0
「記者たち」とは変な邦題だが、そのまま、ナイトリッダー社(あまり聞いたことがないのは私だけ?)ニュース配信会社の記者達の話。サブタイトルがそのまま原題、衝撃と畏怖、”Shock and Awe.”  ブッシュ政権下で全米メディアが一斉に大量破壊兵器があると報じる中、唯一真実を報道した記者たちの話だ。地味な映画だがナイトリッダー社の中年記者と若い記者二人組、そして圧倒的に信頼出来る上司との仕事の日々を追う物語となっている。このようなマイナーな?メディアが(今はないらしい)アメリカの民主主義を支え陰の功労者だと知り、また一層アメリカはよく出来た国だと感心した。いや、この大量破壊兵器に関して大規模な殺戮と無駄を平気で続けたアメリカもとんでもないとつくづく思ったが。

イスラム世界では敵対しているスンニ派とシーア派、フセインとアルカイダを結びつける証拠はなかったのにイラクは大量破壊兵器を持っているなど既成事実化しようとする政府、その安易な嘘を全米メディアがそのまま報じ、アフガニスタンに派兵された兵士達も自分達は何をすればいいのかさっぱり首を傾げる中、大金だけがどんどん投入され、大量の人が死んでいく。まるで無駄な戦争について詳しく描いているから皆さん是非勉強のためにも一見の価値はあります。

若い方の記者さん(ジェームズ・マースデンはどっかで見た顔と思ったら「アリーマイラブ」の後半に出て来る新人弁護士でしたね)は仕事以外誰とも話すこともない様な偏った政治バカなのだけど、何故か同じマンションの向かいに住む女性と仲良くなり?無理やりに色恋をこの地味社会派映画にねじ込むの?と疑問だったが、実際は、素人の彼女を通して、この複雑で分かりにくいムスリム世界やオスマン帝国時代の成り立ちやらを語らせ視聴者が理解出来るよう導く設定になってました(早口過ぎたけども)。そうでもしないと一部の詳しい人以外はなかなかわかりにくい内容です。しかし記録としてこういう映画は残さないとならないと思う。地味な映画だったが、真実に肉薄する記者達の姿には感動した。日本もこれくらいの情熱で民主主義を追求するメディアが存在してほしいものだ。
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