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恐竜の詩の特売小説のネタバレレビュー・内容・結末

恐竜の詩(2018年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

先ずは具体例を挙げて、本作の作りが如何に歪かをネタバレ全開で書いてしまいますけれども。

あらすじに書かれる一番にパンチのある部分、即ち恐竜の赤ちゃんが現代に生まれるエピソードですけれども、世紀の大事件の筈のそれが大騒動に発展する事は一切なく、一家庭に於いて犬猫と同じペットとして扱われ、そもそも恐竜の卵が発見された理由については何らの根拠の提示もないまま、タイムスリップって本当にあるんですね、などという長女によるモノローグで強引に説明される、更に、最終的に恐竜の赤ちゃんはやはりタイムスリップで以て元来存在していたであろう時代に送り返される訳ですけれども、タイムスリップが如何なる条件下で起こるのか、恐竜を飼っていた家族がタイムスリップ現象が何時何処で起こるのかをどう知り得たのかも説明されないまま行われる訳ですよ。

果たして恐竜の赤ちゃんは、無事に家族と逢えたと説明されるんですけれども、それを誰が確認し得たのか一切謎のままなんですよ。

端的に言って雑に処理されるだけのエピソード、更に言えばその恐竜が動く度にモーター音が聞こえていたんですがそれも別にギャグでもなく、後に伏線として回収されるでもない始末、正直不要なエピソードになって御座いまして。

どこを向いて作られた映画なんだこれは、という事ですけれども。

さて。

妙ちきりんな被り物だったか着ぐるみを着て芳野わかめと名乗り「ゲームWAVE」に出演する姿に感銘を受けてあたしゃ彼女の名前を憶えたんですけれども、その際に妹分として一緒に登場していた娘さんが誰だったのか、そっちはしかし思い出せずにもやもやしておりまして。

とまれ、水着仕事をしてくださる全ての女性芸能人にえげつないくらいの幸福を掴んで欲しい、という個人的な願いから芳野友美を応援する積もりで観賞に臨んだ次第。

んで。

町興し資金捻出の為に田舎町に赴任してきた商社マンと、転入先の高校で放送部にスカウトされ仲間と共にコンテストに挑む事になった商社マン家の長女、そして商社マン家の長男が通う小学校のクラスを臨時で受け持つ事になった新米女教師、それぞれが奮闘する姿を描いた内容かと思うんですよ物語としては。

しかし三本のエピソードが同時進行していたと理解出来るのは後半になってから、上述の二本目のエピソードが本格的に開始されるのは映画も後半に入ってから、三本目のエピソードに至っては、展開と結末が用意されたいわゆるエピソードだと判るのが終盤も終盤に、という段取りの拙さが如実に判る歪な構成になって御座いまして。

更に映画として、協賛企業や事業所のPRがそもそもの目的らしく、不自然な宣伝広告がわんさかぶっ込まれる作りになって御座いまして。

物語としてその進行方向が判然としている前半こそ、思い切りの悪い素人が照れながら冗談かまして駄々滑りするようなお寒いギャグシークエンスを不自然な宣伝広告のシュールさが軽く凌駕しており腹を抱えるほど笑えたんですが。

こちとらが本筋だと思っていたエピソードを中断して別のエピソードを新規に語り始めた段、即ち観客としては映画の終わりが読めなくなった状態、ここに置かれて以て栗農家の苦労話だとか布織職人の情熱と想いといった興味のない逸話を延々と聞かされるという拷問を喰らわされる訳ですよ、地獄に叩き落される訳ですよ。

有無を言わさずスポンサーのご機嫌伺いに付き合わせる訳ですよ、「デイ・ドリーム・ビリーバー」に拒絶反応を示すセブンイレブン店員の心境ですよ。

以上は氷山の一角、挙げ始めりゃ切りがないほどのものづくりに於いてやってはいけない悪手の見本市状態。

本作が制作されるに至る経緯を文脈として読み解いたらばなにか面白い事柄にぶつかるかも分かりませんけれども、とまれ映画としては、後半からその愛嬌を喪くしてしまいますからしてもううんざりするばっかりの時間となりました、と。
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