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魂のゆくえのshingoのレビュー・感想・評価

魂のゆくえ(2017年製作の映画)
3.7
温暖化による環境問題や企業と癒着したメガチャーチなど社会や政治的側面が強く、そこに宗教的な側面とイーサン・ホーク演じるトラー牧師の葛藤とを交え描き、様々な要素が詰まったまさにポール・シュレイダーの集大成的ともいえる作品。

基本的に全編に渡って淡々とした長回しの会話シーンばかりが目立つ地味な作品だが、イーサン・ホークの静かに狂気じみた演技や地を這うようにゆっくりと移動するカメラワークはホラー映画のようでもある。音楽が聖歌隊のコーラスだけで構成されているという点もどこか不気味。

よく言われてる「タクシードライバー」との共通点に関しては自分はあまり感じなかった。どちらも主人公は静かな狂気を内に秘めていて「タクシードライバー」のトラヴィスはその狂気を爆発させるが、本作のトラー牧師は未遂に終わる。そこが余計に残酷さを助長させているようである。

だが本作で最も残酷だと思ったのがラストシーン。あまりにも唐突に終わるこの謎の結末はトラー牧師が見ている幻覚を表現しているようであり、この作品のテーマが永遠に解決することのない問題であるということを示唆している皮肉のようでもある。まるで映画が終了しても決して何も解決することはないと言われてるような。どこまでも残酷で見事な演出。
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