いみ

魂のゆくえのいみのネタバレレビュー・内容・結末

魂のゆくえ(2017年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

はじめのシーン
真っ黒な暗闇のなか鳥の鳴き声や木々のざわめきの音が流れてくる
暗い中出てくる出演者などの文字は筆記体でなんだか赴きを感じさせる。
原題でもある協会がぼんやりと白く現れる。
美しい。
あ、これは目が離せない映画だぞと直感した。

はじめから終わりまで隙のない美しい映像が潔癖すぎるほどで見惚れてしまった。
ウェスアンダーソンからポップさを抜いて大人の配色でまとめた感じ。ハイセンスな建造物や家具、左右対称の配置で写す画面に定点多めのカメラワークが素晴らしかった。少し怖いほど。
他の方のレビューで神の視点という感想がありなるほどと思った。
後半に初めて音楽が流れるのだが不穏な不快な音でまるでホラーのようだった。

結局人間は真実を知ってからまじめに立ち向かってしまうと変人や病人扱いを受ける。
マイケルを筆頭に環境問題に真摯に向き合ってきた人々は精神を病んだり命を絶ってしまう。
あまりにも大きな問題すぎて物事を正しい方へ変えていきたくても無謀なことで正義や正解は簡単に潰されてしまう。
大体の人間が諦めて蓋をし明日を生きていく。

戦争と政治と宗教、
過去と現在とこれからの自分、先の地球。
すべてが濃密で混乱しそうなことなのに、混沌とさせずに淡々と写し出す時間は匠の技。

トラーは愛する我が子を戦争で失い、神の言葉で救いを得られながらも結局は金がないと運営をできない状況にさらされ政治に巻き込まれている。
十字架のように眉間には大きな深いシワをつけて生きている(イーサンホークのあのシワだけでもこの映画を観た価値はあるぞ、素晴らしい)。

ラストの解釈は人それぞれあるんだろう、でも私はこれは救いの物語なのだと思った。
ラスト
トラー牧師は息子やマイケルを救えなかったことや正しい神の教えを純粋に全うできない現実に終止符を打つべく爆弾チョッキで式典に出席しようとするも聖域である女性メアリーの姿を目にし激しく動揺、怒りで叫ぶ。
キリストのように有刺鉄線で体を痛みつけパイプユニッシュ(かどうかは不明だが)を飲み命を絶とうとするもメアリーが部屋に入ってくる
二人は抱き合い激しくキスをするのだった。

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マジカルミステリーツアーは言ってしまえば魂の性交。
現実と夢のはざまや肉体と魂のはざまなんかを描くのに浮遊シーンは適しているんだなと感じた。「82/1」「チャンス」「サクリファイス」
名作の定番だ。
好きだなぁ。

メアリーとエルンスト(トラー牧師)のキスシーンはもちろん愛情ゆえの行為だろうけど
死ぬことを阻止したメアリーの奇跡が、愛が、私には神からの赦しのように感じた。
妊婦はさしずめ生命の創造主、希望の意味もある


このあと療養し牧師をやめた彼は出産後のメアリーを訪ねる
というのが私の希望のエンディング。
現実、真実から目を背けることに慣れた甘い自分のありがちな思考。こんな風に生き続けてしまう人間が情けない。でも明るいほうだけ見て生きないと心が病んでしまう、死ぬしかなくなってしまう。
人間はたくさんの罪の上に生きてる ということを肝に命じたい。
いみ

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