幽斎

魂のゆくえの幽斎のレビュー・感想・評価

魂のゆくえ(2017年製作の映画)
5.0
名匠Paul Schrader監督50年の集大成。上映は異例の4館2週間のみ。製作費350万ドルで興収210万ドルの大赤字。それでも全米30位と気を吐いた。1館辺りの興収では、監督最大のヒット作。格安ギャラのEthan Hawkeの男気に心から拍手を送りたい。今回も激渋で熱い演技を見せてくれる、ファンは見逃し厳禁の問題作。

【タクシードライバー】友人は「劇場で寝ちゃった」と正直な感想。日本人には難しいテーマ、分ります。紐解く鍵は監督の脚本「タクシードライバー」。Ethan Hawkeは従軍牧師で、イラク戦争で息子を失った。Robert De Niroもベトナム戦争の帰還兵(を仄めかしてる)。戦争は大義名分の無い戦い、生きる事に疑問を持ち、袋小路に追い込まれた感情が迸る。違いは「信仰」。De Niroは直情的な暴力へ駆り立てられる。Ethanは信仰と言うルールで感情を抑える。De Niroの様に成れない男を敢えて描く。それは公開され40年経った今でも行動を起こさない、私達に監督が突き付けた「静謐な怒り」。

【無神論者】「タクシードライバー」は、弱者が強者に対して「怒ってもいいんだ」と気付かせた事がエポックメイキング。正義を暴力で表す事が斬新だったが、現代では自己解釈で正当化し、レビュー済の「ウトヤ島、7月22日」の様に社会全体が病んでる。脚本家として提起した問題が何1つ解決され無い、監督の葛藤がEthanの心情とシンクロする。偉大と思っていたアメリカ、救ってくれる筈の神、どちらも信じる事が出来ない。そんな現代人の「魂の叫び」。

【カルヴァン主義】原題「First Reformed」を見てピンと来た方は、神学に精通した方。reformedとは「カルヴァン主義」を指し、同じプロテスタントのルター主義と異なり厳格な信仰心が求められる。物凄く簡単に説明すると「人は常に罪人である」「救済の決定権は神のみに与えられる」つまり、悪い事をしても次に良い行いをすれば救われる。と言う訳では無いと説く、厳しぃー(笑)。マイケルが自殺した、それは神が救うに値しない人間と言う意味。神への信仰が揺らぐアメリカの闇が色濃く反映されてる。

【闇の教会】メガ・チャーチ、久し振りに聞いた。教会はコンビニで言うフランチャイジーで、上部組織が束ねる。建前は営利団体では無く、寄付で成り立ってる。その寄付がグローバル企業なら、どうでしょう。レビュー済のEthan Hawke主演「リグレッション」で描かれた教会の裏の顔を、本作も赤裸々に描いてる。教会が観光地化してお土産を売る時点で、立派な商業施設。宗教とは洗脳とニアリーイコールで、スポンサーの悪口は言えない。民放で大量のCMを流してる大企業と全く同じ。「当たり前の事を当たり前に言えない社会」は、金持ちが強大で従属するしかないのか、それとも自爆の道を選ぶのか?。

【偽善エコロジー】環境保護活動家、嫌な響き(笑)。地球温暖化は二酸化炭素を削減すれば解決出来る。それは20世紀の嘘でヨーロッパの利権の巣窟。本当は太陽の活動が活発なので気温が上昇←実に説得力が有る。報告を受けたトランプ大統領がパリ協定から離脱するのは当然。休眠中に見えるNASAは2018年に太陽探査衛星「パーカー・ソーラー・プローブ」を打ち上げ、データを2019年12月科学誌「Nature」に発表。生きてる間に「宇宙天気」と言う概念が定着し「今日のコロナ放出量」が天気予報で流れる。

「不都合な真実」でノーベル平和賞を受賞したAl Gore元副大統領。彼の豪邸はその広さから米国の平均的な家庭の20倍ものエネルギーを浪費してる。大邸宅を何件も持ち講演にプライベート・ジェットと、10席以上有るリムジンで移動する彼が「公共交通機関に乗ろう」と訴えて、何の説得力が有るのか?「南極の氷は増え続けてる」「海面上昇ペースは加速して無い」「北極のシロクマの数は過去最高」これらはアメリカの研究機関が公式に発表したファクト・データ。これについてGore氏はコメントを拒否している。

環境保護活動家にニュースターが現れた。Greta Thunberg、17歳。彼女の胡散臭さは賢明な方なら見抜いてる筈。目聡い機関投資家は、彼女を利用して脱炭素化のビジネスモデルを発展させた。保険世界大手アリアンツなどの運用額は260兆円。リスクを訴えて、潤うのはヨーロッパの投資会社だけ。アメリカでは「温暖化ホラー話」とも言う。

マイケルの告別式で歌われるNeil Young。先輩に聞くと、とても偉大な歌手らしい。しかし「ブレードランナー」Daryl Hannahと交際してから変に為った。彼女は日本でお馴染みのシー・シェパードを支援する環境保護活動家、58歳の今でも十分お綺麗なんですけどね。テロ紛いの活動と、環境汚染とは全く別問題。なぜ冷静に考えられないのか?それは上記の様な巨大な利権が有るから。

【ラストの解釈】よく聞かれるのですが、シンプルに「映画的結末」。つまりはファンタジーで有る。スリラー的に解説すると、Amanda Seyfriedが登場するシーンは意味深で、その前のシーンで鍵が掛かってる事は説明されてる。ではAmandaは何処から入ったのか?、人間では無理です。つまりAmanda =「天使」として降臨した。次点は洗剤を飲んで死亡した、死の際で見た幻覚説も有り得る。ロジックだけで言えば、なぜエスターでは駄目なのか・・・?。彼は最後に人生の目的に出逢えた。世の中で信じられるのは儚い「愛」だけだと。

小津安二郎を敬愛し、三島由紀夫に感銘を受けた、社会派Paul Schrader監督が、スタンダードサイズで描く「魂のゆくえ」(良い邦題)。貴方には抱きしめてくれるパートナーは居ますか?。
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