竜どん

CURED キュアードの竜どんのレビュー・感想・評価

CURED キュアード(2017年製作の映画)
3.1
切り口は斬新。ゾンビ化(正しくは凶暴化)がウイルス原因による病状なら治癒も記憶の保全もあり得ることで、「回復者」が殺人を犯した「犯罪者」として差別の対象となる世界観も実際に起きそうでリアル。
人間である者、人間であった者、人間に戻れた者、愛する者を奪われた者、愛する者が人間ではなくなった者、様々な立場の様々な思いが錯綜する社会派ゾンビ作品。
現実世界でも精神疾患者や心神耗弱状態における犯罪は議論に登るコトが多い昨今、私自身犯した罪は罪として裁かれるべきというスタンスなのだが、本作鑑賞中は良心の呵責に悩み悪夢にうなされいわれなき差別に晒される主人公(回復者側)に感情移入してました。「断罪」の意識はその罪への関与する立場によって目まぐるしく変化するものだということを痛感。真実を打ち明けられないセナン、それを許せないアビー、力による解決を計るコナー、そして自分とは違うモノを受け入れることのできない社会、それぞれの人間的な「弱さ」が理解できる分、正しい答えを見つけるのは難しい。現実社会における「人種」「宗教」「貧富」等の違いによる差別や軋轢にも置き換えることのできる考えさせられる中々に深い作品。ただ社会派要素が強過ぎるので、純粋にゾンビ映画が観たいって人にはちょっと違うかも。

追記
劇場が狭いってコトもあったんだけど満員御礼、次回も満席とのアナウンスが。内容のタイムリーさもさることながら、世の中の戒厳状態に比して映画好きは怖いもの知らずだなぁと(まぁ自分もなんですけど笑)。回復者への社会の風当たりの強さは現実のコロナ感染者へのそれと同期するものがあって感慨深いですね。
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