カルダモン

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search/サーチ(2018年製作の映画)
4.6
Filmarks試写会inソニーピクチャーズ神谷町。よく作ったな、というのが率直な感想。27歳の若手監督の新鮮さはそのまま作品に表れて、なんだか無性に嬉しくなる。

失踪した娘マーゴットを捜索する父デビッドはPC上で様々なツールを駆使し、履歴から娘の足跡を辿る。徐々に浮かび上がっていく真相の形が思いもよらない方向に転がり、翻弄される。

タブの複製、切り替え、コピー&ペースト、パスワードを忘れた方はこちら、FaceTime、メッセージ、YouTube、facebook、tumbler、Instagram、画像アップロード、ストリーミング配信、etc...etc...
PCスクリーンの中だけで展開しているとは思えないほどの広がりと深みを持った描写に感服。浮かんでは消えていく数々の人物とその背景に直面するたびに背筋が凍る101分だった。

検索する、フォルダを探す、履歴を漁る、といった身近な動作がこんなにもサスペンスフルな効果を挙げるとは正直驚きで、アイデア一発だけではこの効果が生まれるはずもなく、推敲を重ねた脚本と演出によって成り立っていることが容易に見て取れる。伏線の張り方も自然で無理なく、限定的な手法を取りながらも親子ドラマをキッチリ描ききり、ラストまで緊張感を途切れさせなかった。

個人的に最も上手いなと思った部分はチャットやメールなどメッセージのやりとりで、タイピングする文字列が画面に映るだけでありながら、打ちかけた文字をデリートするなど、ほんの僅かな感情の揺れがタイピングに現れてしまうという観察眼に関心してしまった。
また、キーボードのタイピングやマウスのクリック音、無音など、本作に独特な表情とリズムを与えている数々の音響やBGMが素晴らしく効果的だった。

暫定ベスト級の傑作。
実際にPCの画面で見たら楽しいかも。なんて鑑賞前には思っていたが、いざ鑑賞してみたら没入できる劇場で見る方が適していると感じた。