海老

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search/サーチ(2018年製作の映画)
4.5
しみじみと幸せに思います。このような作品が生まれる時代に立ち会えたことを。
今の気持ちは「感動」というより、「感激」が正しいのだろうな。それも極上の興奮を帯びた。
単に奇をてらっただけの映画なら、こうはならない。

まず、
極めて個人的事情と僅かなカミングアウト。

僕の職業は、ソフトウェアエンジニアです。

企業向けの業務アプリケーション、パッケージ製品を企画・開発するのが僕の仕事。
勿論プログラムも組みますしデータベースも取り扱う。このご時世、Webやビッグデータとも無縁ではありません。曲りなりにもチームリーダー故に、恐らく皆さんの想像より遥かに打ち合わせやプレゼンが多く、PCに向かう時間は一日の3〜5割程度。下手したら経理部より短いかも。とはいえ、専門の仕事道具であることは間違いありません。

だから「感激」する。
僕の『相棒』が映画の『主役』を演じているのだから。

「物」越しに人の心理や表情、生活を想像したり、時代情景を察するのは、色々な形で描写されてきた。
それらを全て、コンピュータ、モバイル端末の画面出力に委ねてしまうというのだから。画像データを一部切り出すことをトリミングと言うが、まさに現代のITを切り取ったかのような表現方法。

毎日見ているパソコンの画面。
知らなかった。スケジュールアプリからこんなにも哀しさが滲む事を。
知らなかった。マウスカーソルの動きがこんなにも人の姿勢を映す事を。
知らなかった。キャレット(※)の迷いがこんなにも人の表情を浮かばせる事を。
知らなかった。マルチウィンドウの切り替えがこんなにも焦燥感を煽る事を。
知らなかった。iMessageの相手入力中の吹き出しにこんなにも期待が昂る事を。
(※キャレット:テキストボックス内の文字入力位置を示すカーソル)

敢えて全てを間接的に示されるゆえに刺激される想像力。その先の視界が見えるたびに心地よさを感じる。
想像できることが楽しい。
それでいて想像できない展開が楽しい。
時代が進歩する限り、映画もまだまだ進化を止めないぞと、静かに燃やすような。
そんな立役者に、見慣れた端末が選ばれている事が、嬉しい。

当たり前だけれど、僕のチームが開発したアプリにもユーザーがいるわけで。こんな風に表情豊かに使われているのかと、「相棒」の画面越しに「想像」してみたりなんかして。


SNSという現代のツールの織りなす色々な可能性。同時に、ネガティブな言葉の代名詞にもなるSNS。

是か非か。
結局は使い手次第。

だって僕は、この革新的な物語に、FilmarksというSNSを通して出会ったのだから。
海老

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