うさふわ

真実のうさふわのレビュー・感想・評価

真実(2019年製作の映画)
4.3
人々を摂り込み己の血肉に変えて来た
カトリーヌ・ドヌーヴの真骨頂

大女優の過剰に脚色された自伝本『真実』の真実。
過去に観たどれよりも繊細で鋭敏。0.1秒たりとも気を抜けない108分だった。

1ミクロ単位で差を付ける演技に開いた口が塞がらない。
「フランスで私の遺伝子を受け継いだ女優はいない」

御年75歳のカトリーヌ・ドヌーヴの貫禄に秘める、少女の様な瞳は小宇宙。
御年48歳の年を重ねたイーサン・ホークに驚いたけど、輝く瞳は永遠の少年だ。

出て来る言葉一つ一つがさり気なく、意味深く、
女同士の、言葉以上に表情と視線が物語る高次元な意思疎通に鳥肌が立ち、一発撃ち込まれた言葉の威力に呼吸が止まる。
是枝監督とこの布陣でなければなり立たない緻密なバランスに、緊張感の抜けた今、感嘆のため息。

何だろう、この大女優が身近に感じる。
そうだ、わかった。
職場のある女性にそっくりだ。

華があって気高く、嫉妬深く、皮肉で排他的、
記憶も都合で曖昧になる。
新人に当たりが強く、その人の手にかかれば人が辞める程度の力を持ってる。

そして誰よりも繊細で敏感、時に乙女で時に無邪気、細かい所まで目が行き届き、いつもどこか寂しそう。
少女になったり、私と同い年になったり、年齢相応になったり色んな顔があった。
人間味溢れるその人が好きだし、みんなも不思議と憎めないんだよね。
その人から受けた価値観は、今の自分の中に残ってる。

そんな感じの物語。


らせん軸が動き出す
情緒的で美しいパリの街が
今宵、新しい季節を迎える
うさふわ

うさふわ