髭ゴリラ

真実の髭ゴリラのレビュー・感想・評価

真実(2019年製作の映画)
4.0
愛してやまない是枝監督映画。

評価はしないと決めていたが
どうしても言葉にしたくなった。

日本人監督が描く
とても上質なフランス映画。

ほぼ、家と撮影所だけでのシーンなのに
会話劇のなかの言葉の含みが観る側を
現在や過去
あらゆる人物像
哀愁のある情景へと誘う。

いい意味でひたすら頭を使うので
ものすごく疲れた。

どのシーンをとっても
カトリーヌ・ドヌーブの佇まいが放つ
世界観が、感情・強さ・弱さ
また愛・嫉妬・確執などを魅せる。

演技やその立ち振る舞いから勘違いされやすいのだが
ものすごく愛の深い女優だ。

また、
カトリーヌ・ドヌーブと
ジュリエット・ビノシュだけでなく
イーサン・ホークの天真爛漫さが
その世界観の幅を広げる。

そして、是枝監督の醍醐味でもある
子役の活かし方も見事。

これまでの是枝監督の作品を逸脱した様に捉えられがちだが
むしろより人間の内側や家族の確執や苦悩を繊細に表現している。

「歩いても歩いても」のフランス版かのように思えるシーンも多くあった。

個人的には、フランス映画で
カトリーヌ・ドヌーブを通じて
樹木希林さんのことを描きたかったのでは
と感じた。
特に皮肉な会話や、ボケかたがまるでそっくりだった。
(ドキュメンタリーでは丁度撮影中に樹木希林さんが亡くなって一時帰国する場面もあったが故か)

パリの空気と光をギュッと閉じ込め
音楽もまた美しく、寄り添う。

国は違えど、家族、親子のしがらみや
血の繋がり、その葛藤は万国共通であり
その観点が実ににうまく描かれていた。

吹き替え版も鑑賞したが
始めの10分は違和感を感じるのだが
宮本信子さんの語り口や言い回しが
ドヌーブとシンクロしていくのが
とても見応えがあった。
子役の吹き替えもマッチしていて
むしろ吹き替えの方がより細かく捉えられた。

ぜひ3回観てほしい。
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