前方後円墳

双生児 GEMINIの前方後円墳のレビュー・感想・評価

双生児 GEMINI(1999年製作の映画)
3.0
江戸川乱歩原作を映画化。ド派手な衣装と剃られた眉が際立つ。
独特の雰囲気でホラー、サスペンスというよりもカルトな雰囲気に近い。原色でギラギラした衣装を身にまとい、剃られた眉のせいで役者の眼光が際立つ。このほうが一つ一つの表情に広がりがある。言い換えれば平安時代の公家のような、不気味さとあどけなさが演技のたびに立ち現れてくるのだ。その奇抜さとおどろおどろしさは寺山修司の『田園に死す』を喚起させてくれる。浮世離れしている世界観の中でも、人間の愛憎と自己の存在を濃密に押し出してくる映像は塚本監督らしいとしか言いようがない。そして、江戸川乱歩作品のもつ妖艶さもある。

捨吉と雪雄の二役を演じる本木雅弘は普段は雰囲気で演技をしているが、今回は過剰な表情の動きで狂気をあらわしている。りんを演じるりょうもその美しさと般若にも見える女の恐ろしさを十分に引き出している。ビジュアル的には息が止まるような場面をいくつも見ることができる。
そして物語としての展開は単純だ。雪雄と捨吉が入れ替わり、雪雄は井戸の中に閉じ込められる。捨吉は雪雄として生活を始めるのだが、ここでだんだんとお互いが心象がシンクロし、次にだんだんとこれまでの自分からどんどん離れていき、見失っていく様がおもしろい。